silverの約束


『Happy Birthday〜to lavi♪』


 毎年毎年決まって、四人でお祝いをする。
 生まれたことに、感謝しよう。
 人と人の出会いに、感謝を。



【シルヴァーの約束と】



「アレン・ユウ・リナリーありがとさー!」


 まーるいテーブルを囲んで、中央に置かれたチョコレートケーキに刺さった八本の蝋燭。
 灯った火をラビが吹き消すと、三人の拍手。
 アレンが電気をつけて、ユウかケーキをカットして、リナリーがご馳走を用意しはじめた。
 ラビの誕生日のときはこの役割がもうお決まりになっている。
「ありがとう」ラビが笑う。
 年も性別も様々な四人で祝う誕生日会は、もう十年がたつ。

「はあ、もうラビも十八かぁ」

 リナリーがホークをお皿に置くと、どこかしみじみをしたように言った。

「見えねえな」
「神田こそ」
「てめえ!」

 ユウが賺さず言葉を継ぎと、アレンもそれに嫌味を続けた。
 この二人は決まってこうだ。男同士っていうのもあるのだろうが、昔から折り合いが合わない・・・わけではないのだが。この二人はこれはこれで仲が良いのだ。

「もう、二人ともやめなさいよ!」

 発端が何であれ、リナリーが必ず止めにはいるのでラビはもくもくとケーキを食べた。
 二人に低レベルな言い争いがおわるころ「どっちもどっちさ」と呟くと、リナリーもラビも笑って、神田とアレンはお互いから顔を背けた。
 長年続いたやりとり。高校生になっても、離れることはなかった掛替えの無い繋がり。

「ラビは大学、此処の通うんでしょ?」
「ん〜・・・」
「っぇ、ラビ!外部受験するんですか?!」
「俺も聞いてねえぞ」

 次々と投げかけられる質問にラビが答えないうちから三人はラビの将来を語りだした。
 相変わらず、世話焼きの集団だ。
 女の自分が、世界放浪・実家を継ぐことも出来ないことを判っていてそこにだけは触れない、優しい友達。

 
 四人がであったのは、小学部から大学部まであるクリスチャンな風習の私立学園でのことだ。
 何の共通点もなく、学年も性別もばらばらの自分たちが出会ったのは、とてもじゃないけど運命だったのかもしれない。
 女であるラビと男である神田は同じ年だけど、学部も学科も部活も違う。つながりはただ同じ寮生だったことぐらいで。
 ラビや神田より二つ下のアレンとリナリーもまた、殆ど赤の他人だった。
 でも、出逢ったのだ、学園内で。
 ひきつけられるように集まった。
 男とか女とか関係もなく、導かれるように。

「違うさ。大学に進学するけど、うちじゃ学部を少し迷っているだけ」

 そうか、と納得したのか神田が一番最初だった。同じ学年だけあって、思考が付いていきやすいのだろう。
 同じく神田も迷っているのだ。

「そうですか」
「そっか。決まったら教えてね」

 アレンとリナリーも同じく納得してくれたのか、ほっと笑んだ。
 始まりは、誰がきっかけて各々の誕生日を祝いはじめたのか正直覚えが無かった。
 四人意外にも、リナリーの兄や、その兄の同僚などがいたり人数は様々だったけれど、どんな用事があっても誕生日会は決行されていて。
 高校生になってまで続くこの会に、今年はゲストがいるはずだった。
 一部に人気で一部に迫害を受けている、コムイの同僚。
 名前を出しただけでアレンは左手でグラスを割るし、神田は木刀を取り出すけど、リナリーは笑って誘ってくれたんだけど。
 実際、誕生日会は四人で。
 ラビは何も言わなかったから、三人も何も言わないでそのままを受け入れてくれた。

 何処に行くのも一緒だったわけじゃないのに。
 そこは、いつも暖かく迎えてくれる。

「さて、プレゼント交換としましょう!」

 ラビの誕生日だというのにプレゼントは、交換、だった。
 これは、それぞれの誕生日を祝うごとに決まった習慣で。
 この学園は、入学と同時に校章代わりに純銀のクロスを授与される。
 クリスチャンらしい演出。
 黒を灰色を基調とした学園らしい特徴だった。
 裏にはそれぞれの英語で名前が彫られている。
 それぞれ、世界に一つしかない銀色の十字架。

「ラビ」

 神田がラビにクロスを投げてよこす。
 そして、ラビは自分の持っていたクロスをアレンに渡した。
 アレンは有難う御座いますと笑むと、リナリーにクロスを渡した。

「交換しゅーりょー」

 リナリーが神田にクロスを手渡すとにこっっと笑う。
 クロスを交換し合うのが、誕生日の約束になっていた。
 ラビに手元にきたクロスには、リナリー・リーと彫ってある。
 これを寄与されてもう12年。
 自分の手に、自分の名前が彫られたものがあったことのほうが少ないけど、リナリーの手にある自分のものは、きちんと手入れもされているのは電灯を反射させて隅から鈍く光っている。
 見渡す限りどれもこれも、きらきら光っていて。
 大事にされているのがわかった。
 ラビは手の中のクロスを握る。
 離さないから、きっと。


「ご飯、お分かりいる人!」

 神田とアレンが手をあげると、再び口論が繰り広げられる。
 蕎麦やらみたらしやら単語がでてくたので、もう直ぐ終わることだろう。
 どれぐらいの間このやりとりを見てきたかわからないけど、これからも、
 恋人でもないけれど、若しかしたらトモダチをいう枠に嵌めることもできないかもしれないけど、
 できることならば。


 ラビはリナリーに、目配せして小さく笑って見せた。
 
「また、来年も祝ってさ」

 その言葉に言葉の応酬も止まり、トリオが奏でられた。


『もちろん!』


 誕生日おめでとう!




0813


もう、6年ぐらい前に書いたものです。
懐かしい…







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