Days
short
story
0420 追憶
「会いたかったー…」
ラビの目の前で、一人の少年が、泣いていた。
わけもわからなく、ただただ泣いている姿を眺めているだけだった。
眺めている、その表現が非常に的を射ている。
体が動かなかったのだ。
理由を訪ねようとしたくても、慰めようとしたくとも、石のように固まって動かない。
それは、体だけではなく、頭も一緒だった。
会いたかった、それがラビにたいしての言葉だったのかさえ、理解できない。
むしろ 考えることを放棄してしまいたい。そんな気持ちさえ競り上がってきている。
なんでこんな気持ちになっているかさえわからない…
「やっと、やっと会えた」
少年の胸元にひかる、金の造花が、彼が新入生だということを物語っていた。
とっさの過去を振り返る。ラビは眉間にシワがよった。記憶力のいい自分が、かすりもしない。
「会いたかった、ラビ」
15才にしては、背丈も高く、だが何よりそのはっきりとした顔立ちが何より目立つ少年がさめざめと泣いている。切れ長の瞳から綺麗な涙を褐色のほほつたいにおとしていく。
なぜ、自分の名前を知っているのか。
幼いときに出会ったのかもしれないが、もう38才になるラビには遠すぎる記憶だ。
「おまえ……誰さ」
彼にとって、自分が教員でしかないのに、ざつな口調になってしまった。だが それでいい気がする。
「…ラビは思い出せないよ、でもオレが覚えているから平気だよ。……もう、離さないから」
その瞬間、ラビの胸は大きく脈打つ。
息がくるしい。
暑いものが、込み上げてくる。
「…いみが、わか…んな…おまえ、だれ…」
気づけばラビも泣いていた。
混乱よりも大きな心臓を握りしめられるような衝撃にラビはくっと息をつめた。
・・・・・・
いま 自分の中ではやっている 生徒ティキ×先生ラビのパラレル。
大人受けがすきだから(笑)
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