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story

0727 学園ものティキ×ラビ


■■Tyki


 ラビはいつでも笑っていた。
 壊してやろうと、思っただけなのだ。

 最後に最後にティキは何を血迷いごとを、とあしらってやろうと思った。
 ティキに、さようなら、と呟いたその瞬間まで。
 
 目を隠したその姿が、ただの一人の子供から、腕の中に収めたい熱に変わった。

 じわっ、と広がった困惑。
 曖昧だった愛しさ。



 ラビは顔を上げて、ティキを写した。
 桃色の頬。真っ赤な目尻。
 少しだけ、その瞳の中に挑む色が見える。
 逃げないと言いたげな。




「でも・・・、オ、レは・・・っ 」




 息がし辛そうなほど、鼻が詰まっている声だった。


「あんたが好きだ」



 何もいわずに、背中に回していた腕に力をこめて、
 抱き締められた。
 苦しい。空気がこんなに重たいなんて知らなかった。邪魔だなんて思わなかった。



 言葉が重なるようだった。動悸というリズム。
 きっと忘れられない記憶として刻み込まれる。
 その瞬間瞬間。


 叫んでも良いだろうか。声が嗄れるぐらい。


 教えてくれた。
 今まで言われるままに唱えていた愛の言葉のつくづく軽いこと。






■■Lavi 


「……ぇ、わ!先生?! 」



 ティキの瞳から伝う滴におろおろと慌てた。
 男の人の涙を見るのは初めてだった。自分も男だけれどオレ自信が涙なんてものには縁遠かった。
 目の前にいる上質な男の涙は、暑苦しくなくそうそうとしているわけでもなく、ただ作り物のように一筋。
 掬ってよいのかと戸惑うほどに何処から見ても綺麗としかいいようがなかった。
 ふれると生暖い。ただの塩分じゃなくて、ティキから溢れたもの。もっと近くに寄りたくて唇を重ねた。


「ラビ・・・」

 
 オレの名前にこんな風に熱があったなんて。
 爆発しそうになる。この人があまりに愛しくて。
 こんなに感情が高ぶる事はなかった。生まれてこの方、もしかして一度もない。
 

 世界中でオレとあんたがいるかぎり、独りよがりなんかじゃない。



 オレが生まれてきた意味を、この人にしてもよいだろうか。




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