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story
0721 ラビ
何事もなかったかのように、
愛されていた瞬間が非常識だったんだと
気づいたときは、
いつも手遅れで
あんたはいま何をしているのかさえ知らなくて
もう一度敵になってくれたら会えるんだったらと
死と背中合わせでも、あいた………・・
万年筆のインクが此処で途切れた。
頬杖をついて無意識に機械的にペンを走らせていたラビが、乾いた手元の感覚に頭をもたげた。
視線だけで自分の手元を追う。いつの間にかかき散らしていたのかまったく意識していなかった。
ずいぶん長い間瞬きをしていなかったみたいで、乾燥している深い緑のおくがこぼれるよう揺らめいた。
ゆっくりと、光を遮断するようにまぶたを落としていくと、ぱりっと表面が割れるような音がして、残骸が溢れた。両面に痛みの熱さが走る。
すると、ほほを生暖かいものが伝う。
いたい。
万年筆を握っていた指先が力をこめすぎて震えた。
意図せぬ本音に、涙が溢れていた。
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