Days
short
story

0426 ティキラビ/本当は、ワルツは続きがあるのだけれど…

※パラレル


(1)


 その日は、酔わずにはいられなかった。

 頗る・・・それはもう、にくったらしいぐらいに・・・勘の良いアレンから電話が来たのは、午後8時のこと。
『呑みましょうよ』
 数分後、二つ返事でそれを承諾した俺にほっこりほころんだアレンと、互いの声を通信していた携帯電話を持ったまま自宅のマンションの玄関先で対峙した。山のような酒を買い込んでうちに舞い込んできたアレンは、オレの答えを始終YESで受け取るつもりだったと見受けられた。
「・・・良いよ、って言ってからまだ十秒たってないさ」
「家にいてよかったですよ。ケーキとピザも買ってきたので、さあ食べましょう」
 にこっと笑ったアレンは、見事なまでにオレの引き攣った笑顔を無視して乗り込んできた。
 稀に見ぬ強引さに何を言っても無駄と悟ると、自宅だというのに後ろから着いて行くしかなくなって。
 邪魔されたリビングの床に広げられた酒瓶の数はちょっとしたホームパーティが開ける量で、度肝を抜かれる。
「・・・ぅおーい」
 幾らお前が豪酒だからってこの量を二人で飲みきるのか。明日お前も仕事だろ。つか俺仕事だよ、勘弁してくれよ。
 無言の苦笑いを背中からも感じ取ったのか「無礼講ですよ、ラビ」と彼は振り向きざまにまるで天使のように清純な笑みを浮かべる。
 その瞬間、調子ぬけ。
「無礼講、・・・か」
 あぁ、アレンの笑顔は凄い威力だ、と改めて実感する。
 本当は心から助かった、と思った。理由を聞かず、何も言わず一緒に居てくれて。一人きりがつらいなんて、前まで少しも信じていなかったのに。
 居酒屋でわんさか買ってきた赤ワイン(どうして此処でチョイスがワインっつうその意図が不明だ。大量なワインって、悪酔いしたら一溜まりもねぇだろ。いや、実にアレンらしいけど。いつでも限界以上を教えてくれるんだ)で二人で朝まで飲み明かそうってことになった。
 学生時代からの友人のアレンは、いまはもう俺とは関係ないところで普通に就職・・・いや、あいつの就職先が普通なのかはさておき、一ヶ月二ヶ月音沙汰無しが当然だというのにふらっとラビのもとにやってきたりする。
 それは、俺が長期に海外に飛ぶ三日前だったり、はたまた人生の転機的仕事の前日だったり。奴と、出会って酷く自信がなくなっていたとき、とか。 アレンは暖かかった。判っているとも無理はしないでなんて慰めさえも何も言わないけれど、アイツの笑顔は魔法みたいにふわふわのオーラをまとっていた。言葉という防御を失ってもいいのだと錯覚させるぐらいに空気を暖める。
 弱音を吐いたことはない。もともと俺はそうゆう性質なのだ。誰かの前で泣いたことはないし、誰かの為に泣いたことはなかった。
 なかったんだ、確かに。
 わかっていたのに。信じてはいけないと。誰かを信じた時点で俺はもう昔の俺に戻ることは叶わなかったのだろう。ワインを一口嚥下させて嫌気を挿した笑いを零せば、アレンはただ目を細めた。
「うまいさ、アレン」
「・・・どういたしまして」
 何もいえないけれど、何も言わない彼その優しさに今日だけ甘えることにした。

 だって、独りなんて辛すぎる。
 他人の熱を、知ってしまっていたから。






ラビラビとアレン様ができてるのか?(ぇ)友情と信じたい…


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