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目の前の光景に、お先真っ暗という言葉が見事に当てはまるような絶望感をこの身に味わった。目の奥、脳が爛れたような不快感に体までもが支配される。今すぐにでも凶器を取り出し、その男の首奥深くに食い込ませ目の前にひれ伏せさせたくなる衝動に駆られる。

「何をしてる」

「…クロロ」

「黙れ」

おまえに触れていいのはオレだけのはずだ。その瞳はオレだけをうつし、その髪はオレのためだけに薫りを放ち、その唇はオレだけを受け入れ、その掌はオレだけを包むためにある。だというのに、なんなんだ、これは。あまりのオレへの仕打ちに二人揃って首を絞めたくなる。オレがどれだけおまえを愛しているのか、それがわからないほどおまえはバカだったのか?ありえない。裏切りだ。暴虐だ。非道すぎる。幻影旅団の頭であるオレがこんなことを考えるのがおかしいとでもおまえは考えているのだろうか。もしそうならバカだ。唯一絶対、オレだけの至高の宝がおまえだというのに。

「覚悟は…出来てるな?」

他の奴にその肌を触れさせた、その罪くらいはバカなおまえでも理解してるだろ?

「え……ちょっ、まっ、」

「待たないさ。おまえが悪い、そうだろ?」

「や、来ないで…っ!私の言い分も少しは、」

「いったい何がある?オレ以外をこの家にいれたことですでにおまえの有罪は確定だ」

「そ、そんな…」

そんな絶望染みた目でオレを見ないでくれ。我が者顔で彼女の胸に手を当てるそいつを睨み付けた。吐息が掛かるほど近い目の前の奴らにいい加減にしろと殺気が溢れる。得意げな顔で舌を出したそいつが彼女の唇を舐めた瞬間、何かが頭の中でブチリと切れた。

「跡形もなく塵にしてやる」

盗賊の極意を発動させ徐々に近づく。恐怖に顔を引きつらせながら、そいつをきつく抱き締める彼女を見て益々頭に血が上った。許せない。おまえも後でお仕置きだ。

「ね、猫拾っただけなのに…!」


20110131

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