dream | ナノ

「アーン?…暇潰しとは言ってくれるじゃねーの」

どうやら空気を凍らせたのは氷帝のキングだった模様。
すげえな、コート以外も凍らせることが出来るんですねカッコワライ。
とまあ言ったものの…どうしよ。
確かに自分達が真面目にやってる部活を暇潰しに見に来てると言われたら怒る……のか?
いや、私ガチ中学生だった時堂々と暇潰しに来た!って言ってた奴とかサボりの口実に来たって奴いたけど…あっそう、としか思わなかったな、周りの真面目な人たちも気にしてなかったし。
ちなみに剣道部でした、然りなく幽霊部員だったけど。
えー……面倒い。

「スミマセンデシター」

「貴様…バカにしてんのか?」

「エライ棒読みやなぁ」

「謝罪には聞こえないCー!」

「この面子であの態度……宍戸さん、あの人ある意味スゴいですね…」

「感心するとこじゃねーよ長太郎、激ダサだぜ」

上からキング、忍足、ジロー、鳳、宍戸である。
ちょっ、お前ら、だからなんでいつまでもいるの。
向日を見習って早く教室行け。

「名前は私の付き添いで来てて…普段からこうなのー」

「ファンやないんか」

「むしろ一般生徒代表っス」

「一般生徒って…」

知らない男子にツッコまれた。
ファンクラブとそうじゃない生徒の違いが激しいから一般生徒って言ったんだけど、なんか間違ったか?
てかこの子誰だ…レギュラーに居たっけ?
ダメだ思い出せない。

「ファンやないんか、なら納得したわ」

「なにが?」

「図書室で爆笑してた女生徒をこの前見かけてなあ、あれ君やろ」

「げ」

バレてた。

「忍足、なんだそりゃ」

「あー…スタンド座っとったら頭上で噴き出した声聞こたんや、なんやろ思て上見とってん。したら図書室で窓あけながら爆笑しとる子おってなあ、すぐ閉めとったけどずっと笑てたわ」

「いや、普通気付かない…よね?」

「腹抱えてたやん、丸見えやで。ちょうど跡部のキメ台詞あとやったから時間差で結構目立ってたなあ。ファンならあの跡部見て発狂はしても爆笑はせんもんや」

「あー、名前がデレてくれた日かー」

私がデレた日ってなんだ。
あれか、手を振り返したこと言ってんのか雪さん。
それにしても…見られてたのか。
じゃああれか、窓の縁叩いて笑い転げてたのも全部見てたの?
うわ、不覚すぎる。
まあでも何に笑ってたかはわからないだろ、別にバレても構わないけど相手のプライドを考えるとバレない方が良さそうだ。
忍足は気付いてるみたいだけどキングはあれじゃあ気付かないはず、ナルシストだから。

「雪、教室行くよ」

「えー!」

「なあなあ、それゼッテー景吾のアホさ加減に笑ってたろ!」

黙れお前えええ!
穏便に済まそうとしてんのになにハッキリ言ってんの?!空気読めないの?!
レギュラーに混じってニヤニヤしながら言ってきた男の子に軽く殺意を覚えた。
ていうか、誰。

「やっぱそうなん?」

「だろ。激ダサだぜ」

「でも彼女もファンなんじゃ…」

「雪って教室でも一人で行動出来ないって麗奈言ってたCー。朝練見に来るのに名前は付き合ってるだけって言ってたぜー」

若干テンションが落ち気味のジローの言葉によりファンじゃないのは理解されたらしい。
なんだ、ジローもやれば出来るじゃないか。
てかなるほど、麗奈とジローはクラス一緒で雪は麗奈経由で仲良くなったのね…。
なんで今普通に話せるこの人たちに離れたらあんな熱狂するんだろ、正直まったくわからない。
え…ノリ?その場のノリなの?

「おい雌猫。俺様をシカトするとはいい度胸じゃねーか、アーン?」

「は、ひゃい!なに?!」

急に低音が耳に入ったからビクッと肩を震わせた。
え?話し掛けられてた?ごめん気付かなかった。
てかちくしょう…無駄にいい声しやがって!
声フェチバカにすんなよ、いくら低音好きでもそこまで簡単に陥落する女じゃないからな私は!
簡単にいくと思うなよ!
もはや自分が何を言ってるのかわからない。

「なんだ貴様…やっぱ俺様の気を引こうって魂胆か?…ハッ!」

鼻で笑われた。
うっぜえええコイツうっぜえええっ!
不意討ちの低音ボイスに顔赤くなったのは否定しないけどな!出来ないけどな!
だけどうぜえええっ!

「え?!…ホントだ名前顔赤いよ!そうだったの…?!」

「なんや…岳人の言う通りかいな」

「いや違………あー…あ」

閃いた。
……ファンってことにしといた方がここに居る場合違和感ないし良んじゃね?
騒がしい生活は望んでないから出来るだけ彼らの印象には残りたくないし。
絶対うるさいだろこいつらの周り。
楽しみたいときに眺められればそれで充分です、下手に近づいて女子の友達減るとかいう王道は嫌だ。
いや今時本当にそんなベタなことあるか知んないけどね、保険は大切に取っとくもんさ。
思ったが吉日、瞬時に頭を振ってだるさを抜けばテニス部ファンの子達を思い浮かべた。
仕事モードinファンクラブバージョーン!
痛いとか言わないで、わかってるから、もっと痛いこと今からやるから。
胸の前で祈るような形で手を組み、半眼だった瞼を持ち上げて視界をクリアにする。

「名前?」

頭を振った私に雪は変な眼差しを向けたが気にしない。
今まで見てきた跡部ファンの姿を脳内シミュレーションして、とりあえずぶりっこすれば良いかと結論を出せばバッと顔をキングに向けた。

「あの…ほんとは私跡部様の大ファンなんですぅ!ちょっと今までは緊張しちゃって変な態度とっちゃったかもしれないですけど…もしお近づきになれたら嬉しいなーと思って今日来てましたっ!図書室でやってたことは、その…クリアな視界から貴方を見ていたくて…」

「なっ…名前ー?!」

うるせぇな雪黙ってろ私は今いっぱいいっぱいなんだ潰すぞ!という意味を込めて叫んだ雪に振り向き張り付けた表情で笑って見せたらあっさりコクコクと頷いてくれた。
あ、その後ろにいたジローも頷いてる。
なんか…なんかごめん。
こんなキモい私を見せてごめん、いろんな意味で気持ち悪くて吐きそう。
チキン肌が半端ない。

「いや、緊張でああだったって無理あるだろ。むしろ緊張感の欠片もなかったよな、あれ」

「んー…確かにそうですよね…」

「なんや宍戸、本人が白状しとんのに疑うんか」

「いや、だってよ……ってテメッ……その顔楽しんでるだけじゃねぇか」

「さあなぁ?」

外野がなにかブツブツ言ってるけどそんなの聞こえない。

「ハッ、やっぱりな。…おい樺地!行くぞ!興味が失せた。こんな雌猫一匹構ってる場合じゃねぇからな」

お前から絡んできたんだろーがどうせ樺地くらいしかお友達居ないから寂しくて来ちゃったんだよねそして教室行くタイミング逃しちゃったんだよねキング乙ー!
と心のなかで罵声を吐き捨てながら傷付いた少女のフリで俯いて肩を震わせる。
褒めるとこがなさそうな人を褒め殺すことや、落ち込んだフリや反省したフリというのはバイトで散々やってたから楽勝だ、大人って汚いよな。
その分彼は中学生だから純粋なんだろう……インサイトも大したことねぇな、大人びて見えても所詮は中坊か。

「貴様等、授業に遅れるんじゃねぇぞ!行くぞ樺地!」

「ウス」

最後に残ってる数人に声を掛けたあと、まるで主従のように樺地を連れだったキングは校舎へと姿を消した。
ちゃんと声掛けするんだ…真面目か。

「…っぷはー!名前もういいー?てかどうしたのさっきのあれ!なんか…可愛かっブフッ!」

なんか言い掛けた雪の顔面にブラックサンダーの入った袋を投げつけた。
え?さっきの?イッタイナンノコトデスカー?
痛かったのは自覚済みだからもう良いよ…てか雪、息まで止めてたお前はアホか。
私の黒歴史のページがまた一枚増えたぜ…。

「跡部の奴、結局最初の目的だったジローのお礼話聞いてかなかったな…激ダサだぜ。……おいお前」

激ダサだぜってセリフが激ダサだと思うのは私だけ?
さっきから聞き流してたのにもう……半端ねぇ…!

「なんですか激ダサさん」

「は?!俺じゃねーよ、激ダサなのは跡部だ!」

「いやぁ…」

「ドヤ顔で激ダサ言ってる時点でお前らみんな同類だよ」

ちょっ、君!
だからなんなんだ、所々で毒吐くこの男はなんなんだ。

「なんだお前、まだ居たのかよ」

「ひっでぇな亮ちゃん」

テニス部と仲良いしテニス部っぽいんだけど…ラケット持ってないしなあ…。
唯一自分が持ってた数冊の単行本は氷帝フルメンバーがちょうど出てたはずだけど、わからない。

「雪、あの毒吐き男誰?」

「んー?ああ、男テニのマネージャーだよー。うちらと同じ三年生でマネージャーも三年目のベテラン!ちなみにファンも結構いるよー」

「へー」

あー、マネージャーね。
男なのか…意外だわ。

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