dream | ナノ
五限の授業が終わりを告げる鐘が鳴るまで、私と芥川はわたパチを食べながら二人でパチパチやったり昼寝したりしていた。
携帯を教室に置きっぱなしだったから、色々問題はあったけど何だかんだで芥川がいて良かったと思う、あまり休めなかったけど暇にはならなかった。
「じゃあ明日名前にブラックサンダー持ってくる!またねーっ!」
「じゃーねー」
最後まで覚醒していた彼は騒がしく屋上を出ていった。
ちなみに明日は土曜日だ、芥川は部活だから学校来るんだろうけど私は行かない。
どうやって渡す気なんだ、ただ単に曜日考えてなかったのか私が休日のテニス部に観戦に行くとでも思ってるのか…謎だ。
後者だったなら芥川は私の話を理解してないってことになるからただ間違えただけだと願いたい。
「んー…」
なんていうか、自己中すぎる所以外は普通の中学生だったな。
私は自覚済みの自己中だが芥川は天然の自己中、よく言えばマイペース。
試合にパンツで出るくらいだからどれだけ呆けてるかと思えば駄菓子効果かずっと覚醒してたし。
初絡み、意外とあっけないもんだ。
開封済みの駄菓子のゴミを集めて袋に詰めてから屋上を出る。
いくら二人で食べたといってもあまりのゴミの多さに我ながら若干引いた。
やべえ…もう今日は無しだな、明日も控えよう。
教室に着いて周りを見渡してみれば雪が居なかった、珍しい。
自分の席に座って中身がスカスカの机を漁る。
あれ、携帯無いな。
「ちょっとー、私の携帯はー?」
「あ、ハイハイ私持ってる!」
「机に置いとけよ」
「だってー、戻ってきたら返そうと思ってたのに名前戻ってこないんだもん!サボりとか!羨まっ!ハイこれありがと」
「どーも。私は勉強しなくても大丈夫だからサボっても良いんです」
「うっざ!」
ボカロ廃の心友は携帯を返したあと笑いながらウザいを連呼し私をバシバシ叩いた。
なんなんだ、雪といいお前といい私は叩きやすい何かがあるのか。
「名前の携帯ボカロと歌い手しか入ってなかったから意外だったわー、見た目偏見ありそうなタイプなのに。不良そうだし」
「どう見てもギャルにしか見えないお前に言われたかねーよ」
「え、ひどっ!お洒落追求したらこうなっただけなのに!」
「…ブハッ……絶対方向性間違ったなお前っ」
「ひどすぎる…!そっちだって話し掛ければいちゃもんつけそうな感じなのに」
「ゴホッ…ンッ……まあ、私の場合ダルくてヤる気ない感じがそう見えるだけっしょ。少なくとも真面目ではないし。私のオタク度なめんなよ、部屋はフィギュアだらけさ」
「まじか」
「今度来る?ドン引きしてもいいなら」
「やめとくわ」
こいつ失礼だ、なんのフィギュアかも聞かないで良い笑顔で断るとかこいつ失礼だ。
うちの兄貴なんて私の部屋異次元で楽しいって言うんだぞ、あの楽しさは入った奴にしかわからない。
まだしゃべりたそうにしてたけどなんかテンション下がったから手でシッシッと追い返した。
さっきあまり昼寝が出来なかったためか眠くなった、話もそこそこに切り上げて机に突っ伏す。
あー、うん。眠い。
てかいちゃもんつけそうな感じてなんだ。
「名前!」
「うわぁっ!」
「なんで教室来なかったのーっ?!何かあった?!うわ、なにこの空ゴミ!食べ過ぎだよ全くー!麗奈に貰ったんでしょー、私もあとで取り行かなきゃ!あ、このブラックサンダーちょうだ…」
「うっさいよお前、急に出てきてなんなの」
「だってー」
いつの間にか戻ってた雪にビックリした、不覚すぎる。
マシンガントークをしながら勝手に袋を漁った雪は好物のブラックサンダーを見付けると断りもなしにムシャムシャ食べ始めた。
ちょっ、お前もあいつと同類か。
これを買ったのは麗奈と雪なので芥川のような制裁はさすがにしない。
「私眠い、ダルい、寝る」
「なんで!さっきサボったんだから寝てたんでしょ?」
「乱入者がいてあんま寝れなかったの。ほら、これあげるから大人しくして」
「ちょっ、百円の当たりって!」
駄菓子定番、蓋裏の当たりをあげたら大人しくなった。
安いなお前。
まあ百円もあればブラックサンダー三個買えるんだ、そう考えれば芥川に指定した貢ぎ物の総額を考えて一人吹き出した。
ブラックサンダー十個で三百円…人のこと言えねえ!
なんだがどんどん馴染んでる自分がいる、肉体年齢と一緒に精神も若返ってるのか…中学生と一緒に過ごしてるからだな、まあ良いや。
「…あ、雪」
「なにー?」
「明日もテニス部行くわけ?」
「明日?んー…まだ決めてない。土日は毎日頑張る自分を労る日だからねー」
「マジか。あー…なら良いわ」
「行こうと思ってたの?あ、名前もファンクラブに」
「入んないから。いーよ、なんでもない」
机に突っ伏す。
明日もしも雪が行くなら私の代わりに芥川からブラックサンダー貰ってもらおうと思ったのに…そう上手くはいかないのね。
「寝ないでー、名前構ってー」
「雪うざいっす。……ちょっとあんたらー、この困ったちゃんにボカロオススメしてあげてー」
「任せろー!ほら、雪おいで!」
心友に連れ去られた雪を見て今度こそちゃんと目を瞑った。
あー、次の授業なんだっけ。