dream | ナノ

「てかアンタいつから居たわけ?」

なんやかんやで私は芥川と一緒にサボっていた。
まあ今から教室戻るの面倒だし、この世界での初サボりをこんなことで中断したくない。
芥川も動く気配ないから仕方ないよね。
あまりの私の怒りっぷりに、土下座して謝ってきた芥川を見てやっと平静を取り戻した私は今度ブラックサンダーを私に貢ぐという条件で許してやった。
大人げないとか言うな、許可を得ずに勝手に食ったこいつが悪い。
私はちゃんと雪と麗奈に許可貰ったもんね!

「麗奈と雪が来る前から居たっていうか、寝てた!」

「……ずっとじゃん!」

「ファンクラブについて話してたから出れなかったC」

「ああ…ドンマイ」

「話聞くつもりなかったんだけど…」

「別に良んじゃね?不味いことは話してないし」

「うん、てか嬉しかったんだよね!」

へー良かったねー。
空返事をしたら拗ねられた。
めんどくせー。
芥川と適当にしゃべりながらスッパイマンを黙々と食べる。
一個ちょーだE!と言われたから三粒あげた。
未開封がもう一袋あったからあげただけなんだけど感動されて微妙な心境になる。
いや、ドーナツは一袋しか無かったから怒っただけで、スッパイマンみたいに一袋でいっぱい入ってるやつは普通にあげるよ。
初めにドケチを発揮したためかこの程度で優しいと騒がれたため一発殴った。
かなり最低な奴がほんの少し普通のことをしたらすごく良い奴に見えるあの心理だ、思い込みって怖い。
あんまり気にしてなかったけど今は一応授業中なんだよね、自重しろ、私も反省するから。

「女子にこんな殴られたの初めてだ…」

「知るか」

「あ!そういえば名前知らなE!」

今更である。

「名字っす」

「名前は?」

「名前」

「名前ねー!」

「名字で良いよ」

「俺のことはジローで良いC!名前って変な奴ー!」

安心しろ、お前の方が変だから。

「ねー名前ー……俺、最近部活行ってなかったんだー…」

急に語りだした芥川に怪訝な顔を向けた。
え?あぁ、そう。
……ごめんなさい言ってみたかっただけです、ボカロ廃として一回は言ってみたくなるんですごめんなさい。
気を取り直して……芥川、そんなこと私に言われても困るんだが。

「今学期始まる前のさ、春休み辺りからギャラリー変わったなーって思って。部室でも昼寝できないくらい煩いCー」

「へー…え、ずっとサボってたわけ?ギャラリー煩いってだけで」

やっぱ煩いって思ってたか……でも、あの環境すら我慢して練習してた奴のが大半なんだからこいつダメじゃね?
同情はするけどテニス好きならサボるのはいただけないよな、腕鈍るし。

「そんなわけないCー!学園内でやりたくない奴数人とストテニ行ってたんだけど…」

「へー、なら良いじゃん」

またもや空返事。
テニス部に興味はあるけど芥川自身にそこまで興味はない、場所違くても練習してたなら良いじゃん、くらいしか考えなかった。
スッパイマンが無くなったな……あー、喉乾いてきた。
自分で聞いといてなんかごめん。
社交辞令が通用しないみたいだから私が心配してくれてるとでも思ったんだろう、覚醒してる芥川はちょっと興奮気味だった。

「でもさ、やっぱ氷帝生だC。どうにかしてくんないかなーと思ってたら会長の麗奈と雪に言ってる名前の正論とか提案聞こえて……ファンクラブの中にもちゃんと周り見てる子いるんだなーって俺感動したんだっ!しかも会長に直談判!マジマジ名前かっちょEーッ!」

「ちょっと待て」

ちょっと待て、その周り見てるファンって私じゃないよな、雪だよな。
屋上で話持ち出したの雪からだからやっぱ雪だよね。
てか見てたなら私の謝罪も土下座も見てただろ、都合よくそこだけ意識外れてたとかまさかないよな。

「名前のおかげでまた前みたいに落ち着きそうだCー」

「ねえちょっと、」

「名前って誰のファン?今普通だし殴られるから絶対俺じゃないだろうC……あ、跡部?今回のお礼とドーナツのお詫びに俺経由で良かったら紹介するよっ!」

話を聞けえええっ!

「シィーシィーシィーシィーうっさいんだよこのおバカ!殴るぞ!てか私テニス部のファンじゃねえよお礼言うなら雪にしなさい私口挟んだだけだから。一般論というか自分の愚痴を言っただけだから。紹介とかってなんのお詫びにもなんないよそんなことするならブラックサンダー五個の方がよっぽど嬉しいわ。むしろお礼したいならブラックサンダー十個寄越せハイ決まり、苦情は受け付けません」

大声だしそうになったけどそこはまあ理性で抑えて、小さく早く捲し立てた。
芥川はキョトンとしている。
雪にお礼をしろとか良いながらちゃっかりブラックサンダー十個の大幅アップを言い付けた私に気付かないでいてくれ。
使えるもんは使うよ私、アハハ。
てかキョトンとしすぎじゃないか。

「……名前怖いシ……怖いです」

「…ブハッ……ご、ごめんね言い直さなくて良いよ…っ」

とりあえずCのくだりは理解したのか言い直した芥川に不覚にも吹き出した。
ちょっ、ブフッ、何この可愛い生物!
あ、なんか似てると思ったらそうだ、間延びしたしゃべり方が雪に似てる、気がする。雰囲気か?
だから可愛いのかウケるわー。

「ブラックサンダーいつでも良いからね」

殴るぞ!の言葉が効いたのか青ざめながらコクコク首を縦に振る芥川を見て私はニヤリと口角を上げた。
アハハー、ブラックサンダーゲット。
いじめっことか知らない、微妙にテンション上がるとちょっとSになるだけなんです。

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