dream | ナノ

コンクリートに額を擦り付ける勢いで土下座をした、痛いとか言ってらんない。
すぐに下がる頭だとかそんなの知りません、アルバイターの頭は軽いんです。

「知らなかったとはいえ本人目の前にして言っちゃいけなかったことばかり言って本当に申し訳ありませんでした。でも迷惑してんのはガチだからそこんところは任せた頑張れ会長!」

「土下座とはミスマッチなセリフだねー」

「うるせー雪このおバカ!麗奈が会長ならもっと先に言えこのおバカ!これもう天然じゃなくて悪意だろ、絶対そうだうわあ雪最低」

「違うよおおおっ」

「二人とも煩い」

「ごめんなさい」

私の隣で素早く土下座した雪にビビった。
え、なにそれ麗奈は怒らせたら怖いってこと?
顔上げるのはまだ止めとこう。

「ほら二人とも顔上げて!私が引き継ぎしてからそのまま放置してたのは本当だし。前の会長はちゃんと注意事項とか回してたの、すっかり忘れてた……何も知らない一年や高学年のプレッシャーがなくなった私たち新三年生と二年が煩くなったのも頷けるわ。むしろ気付いてくれてありがとう」

「……ま、一週間やそこらだし、比較的早い内に気付けたから良いんじゃない?繰り返さなきゃ良いんだよ、失敗は成功の元ってね」

「……名前ー!」

麗奈にガバッと抱きつかれてギュウギュウ締められた。
おおおっ、何故だ。
私もー!だか言って雪も抱きついてくる。
ちょっ、何これ両手に花なんだけど、めっちゃ良い匂いすんだけど。

「よし!今日の放課後は交友棟の屋上で幹部集めて会議しよう!跡部君達テニス部には会議前に私が意見聞いてくるから、それまでに雪は皆に言ってきてちょうだい!」

「ぶ、ラジャーっ!」

敬礼した雪が脱兎のごとく屋上を飛び出していった。
ちょっ、行動力半端ねえ。
てかブラジャーって言ったよな、さりげなくブラジャーって言ったよなあの子。

「…放課後言いに行けば良いのに。昼休み終わるよもう」

「私もそう思って言ったんだけど…雪は昔から猪突猛進なの」

「アホだな」

「アホだね」

そうこうしてる内に昼休み終了の予鈴が鳴った。
ブハッ、二分もしてないよ雪可哀想ウケる。

「じゃあ、教室戻ろっか」

「んー…なんかしゃべりすぎて疲れたから私サボるわ。駄菓子置いてってー」

「食べすぎだよ…はい、じゃあまた後でね」

もう一つあった袋に何個か駄菓子を移して私に放り投げたあと、麗奈は颯爽と屋上から出ていった。
お金持ちは懐が広いわー……何個買ってきてたんだ?結構量あるんだけど。

「ちょっ、わたパチ三袋とか神過ぎるっ」

微妙に空気を読んだ麗奈に一人で爆笑したのは言うまでもない。

「あははっ、ヒーッ…もう、あの二人、好きすぎるっ……あ、本鈴」

なんだか高級そうな鐘の音が学校全体に響き渡ったあと、ザワザワとしていた空間がシーンと静まり返って私はニンマリと笑った。
柵の傍に移動して、しっかりと安定したそこに体重を預ける。
うんうん、静かな空間は大好きだ。
てか鐘の音まで高級そうってなんでそんなこだわりあるんだろう、ウケる。

「んー、んー…」

袋をガサガサ漁って何が入ってるか確認した。
何食べようかなー……あ、ミニドーナツ発見。

「いやー、快適快適ー」

「あー、ドーナツだC!」

「うおっ………あ?」

急に聞こえた声にビックリして横を向けば、屋上の扉の上、タンクのすぐ傍にキラキラな笑顔を浮かべたこれまたキラキラ金髪の男の子がこっちを向いていた。
え、いつから居たのこいつ。
え、てかドーナツだシィーって……シィーって……C?
金髪で低身長でサボりそうな奴で、C?
芥川慈郎か?こいつ。

「ねえねえねえねえ、一個ちょーだい!」

「え、やだ」

「えーっ!」

いつの間にか隣に座りやがった芥川っぽい奴は、私の手の内にあるミニドーナツをガン見しながらおねだりしてきた。
なんで普通にしゃべってるっぽいのにCって聞こえるんだろう。
先入観か、先入観なのか。

「えー、じゃないっしょ。誰アンタ」

「三年C組芥川慈郎、一応テニス部っ!君E組の子だよね?」

「え、なんで知ってるの。キモいんですけど」

「えー!?」

女子にキモいなんて初めて言われたらしい。
え、キモいっしょ。
私君のクラス知らなかった上に興味なかったのになんでお前は知ってるんだ。

「……ま、どうでも良いか」

「ねえねえ、ドーナツ…」

「あげない」

「あと三個もあるからいいじゃん!」

「知らない人から物貰っちゃダメって聞いたことないの?」

「俺が頼んでる方だから大丈夫!」

「だからあげないって…ああああっ」

膝の上に乗せてたケースに入ってる三つのうち一つのドーナツを勝手に摘まんだ芥川。
ちょっ、おまっ、泥棒!
一口サイズのミニドーナツは彼の口に吸い込まれるように放り込まれた。
口を動かしながらおいC!とか言ってる目の前の奴に殺意が湧く。
こ、こ、コノヤロー!
とりあえず、私の拳が火を噴いた。

「てめぇふざけんじゃねぇよどつくぞ」

「痛いC!もう叩いてる!」

「食い物の恨みは恐ろしいんだ、私はお前を許さない」

「ケチー」

なんでこんなに人懐っこいのか謎だ。
あれ、中学生って初対面じゃ人見知り激しい人種じゃなかったっけ。

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