dream | ナノ

※『』は英語。

後ろ手に拘束されながら椅子に座る私は結構本気で焦っていた。
何やら物騒な物を手に持っている警備員らしき男たちが私の後ろで控えていたりもしている。
なんでこうなったかなんて微塵もわからないけれど、取り敢えず面倒すぎる事態に陥ったのは理解済みだ、なんてこった。
誰か助けろ。

『で?君はいったい何者なんだい?』

「……」

『…何か話してくれないと僕も困っちゃうんだよね。このまま黙秘なんてしてたら君の為にもならない』

「……」

『…うーん、困ったなー』

目の前には真っ白な服と帽子を被った眼鏡の男が苦笑しながら頭をかいて座っていた。
トラックに轢かれたかと思った瞬間、瞑っていた瞼を開けばもうそこは私の知らない場所が広がっていた。
地面に散らかる夥しい量の書類と壁を埋め尽くした本棚。
外で自転車を漕いでいたはずなのにどう見ても室内なそこは私に混乱しか与えない。
放心したままその室内を見渡し、なにも浮かばない真っ白な思考が徐々に物を考え始めたとき。

『君…誰?どこから入ってきた?』

背後から聞こえた男の声にバッと振り向けば、目を見開き鋭い眼差しを向けたその男が私を睨み付けながら立っていた。
混乱したまま何もわからない私が何か言えるわけもなく、そのまま脳内で絶叫していたら駆け付けたらしい警備員っぽい奴等にホイホイ捕まり。
そして冒頭に至る。

『とりあえずアジア系の顔してるから東洋人なのは間違いないね?』

「……」

はあ、と溜め息を吐かれた。
おいこら、溜め息吐きたいのはこっちもなんだけど。
とりあえず私は事情を把握してないし、こんな風に拘束されて質問責めっぽいのをされてるのは相手も事情がわからないからだ、と推理してみる。
全部が曖昧だ。
曖昧すぎてさすがに泣きたい、てか縄解いて欲しい。
そういやなんで私拘束されてんだ、しかも縄って、いつ時代だよおい。
若干俯いたままむっつりとしてこの現状を理解しようと頭を働かせても、代わり映えの無いこの現状を理解しようとする方が無理なんじゃないかと少し諦めが浮かんでくる。
ガチ泣いて良いかなこれ。

『…仕方ない、地下にでも拘束して…』

やれやれ、といった様子で電話の受話器を手にした男を見て、なんだか嫌な響きの言葉と予感を感じた。
なんだかわからないけれど、冷や汗が浮かんでくる。
え、ちょっ……もしかして黙ってるのにも限界なのか。
そりゃそうだ、むしろ根本的なことを伝えなきゃ話は進まない。
ビビってるから声出したくないとかそんな場合じゃない。

「あ…あの!」

『……え?』

「アイノットスピークイングリッシュ!!!」

力の限り叫んだ、そりゃもう力の限り。
さっきから流暢すぎる英語でわっかんねぇんだよこの野郎!
リスニング得意だけどそんだけ本場に話されたら単語拾うのもムズいんだよこの野郎!
ちなみにリスニングは得意でも自分で文章を構成して会話するなんてことは一夜漬けのテスト前日くらいじゃないと無理だ、テストは完璧でも終わった瞬間忘れる。
洋書もわからない単語があれば辞書片手に読み進めるから本当にそれなりの英語力しか私にはない。
つまりそういう事であり、この男が言ってる言葉を私はほとんど理解できていなかった。
単語すら聞きずらいとかなんというネイティブ。
わかるかっつーの。

『……あー!え?あ、なるほど、なるほどね!……え?』

「…」

『むしろ言葉わからないって…その方が怪しいよね。ここイギリスだし…』

なんだかまた怪しい奴を見る目を向けられた。
なんかもう、本当誰か助けて。


20130812

誰の名前も出ていない残念な形になりました、すみません!
今回は序章的な感じで、続きを考えてるのでいつか書きます。
因みに問答相手は室長です。


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