dream | ナノ
「あ、流れ星っ」
そう言いながら無邪気な子供のようにはしゃぐ彼女を腕の中に閉じ込めながら、それはそれは愛おしそうに、愛おしげに、というか愛しく想いながらじっと見つめる。
俺に背中をあずけて夜空を見ている名前の態勢からは俺の表情は見えないだろうから、あらためて真正面じゃなくて後ろから抱きついていて良かったと俺は内心ホッとしていた。
今の俺は絶対、誰にも見せたことが無いようなすっげえ安心したような、まあ簡単に言えば緩みきった表情をしてるだろう。
あー、かっこ悪ぃ。
誰かを気にするでもなく、一人で感じている気恥ずかしさを紛らわすために俺は上着のポケットに片手の手を突っ込んだ。
もう片方は名前の腹に回したまま。
あったけえなあ。
なんだこれ?子供体温ってやつ?
雪は降ってないものの、やっぱり真冬の屋上は寒い。
ていうか俺等バカじゃね?なんでこんな寒いなか上着常備で階段登って体寄り添って星なんかみてんだ、あれ?
「はーやとっ」
「!あ、ああ、なんだ?」
「なんか黙り決め込んじゃってどうしたー?寒い?寒いか?」
「いや、別に。つーかお前こそ寒くねえのかよ。結構薄着してんだろ」
「まあそれが狙いさっ!」
「は?」
意味不明なことをぬかしたかと思えば、名前が俺の外に出てる方の腕を離れるために掴んで少し距離をとった。
うわ、さびっ!
軽い圧迫感が消えたと同時に急激に襲ってくる冷風の嵐。
まじで寒すぎだ、死ぬ。
そう感じたと同時に離れた名前の腕を掴んで直ぐにまた腕のなかにおさめた。
あー、生き返った。
そう思った瞬間に腕の中から聞こえる声。
ふふっ、やらぷぷっ、やら、まあ肩が震えてる時点で密かに耐えるような笑いをこぼしていた。
は?なんか笑う要素あったか?
「…なに笑ってんだてめえ」
「ふふっ、いや、あまりにも思い通りだから、さ」
「あ゙?さっきから意味わかんねえぞ」
「そ?だったら別に良いよわかんないままで」
「…納得いかねぇ」
そう思いながらも、今度は真正面な態勢でいる名前をキツク抱き締めた。
さっきので納得いくわけないが何故か楽しそうに、嬉しそうにしながら抱きついてくる名前を見ていたらなんかどうでも良くなってきた。
星空の下で何を想うの
ただ隼人から抱き締めてもらいたかっただけさ!
このくらいなら、悪戯っぽくできるでしょ?
2006..