dream | ナノ


爽やかな空模様。
うん、今日も良いことが起こりそうだ。
遅刻確実な時間帯にゆっくりと焦る事無く歩きながら、私はぼんやりと空を眺めていた。
ずっと空を眺めながら歩いていると、微かに漂ってきた嗅いだ覚えのある匂い。

「はいはーい、そこの君ー!」

目の前で煙草を吹かしながら私と同じ方向に向かって歩いている広い背中に、昔の某СМ風な呼び掛けをしたら心底呆れたかのような溜息が聞こえた。
あれ、振り返りもしないでその態度はひどいんでない?

「ちょっ、いきなり溜め息とかってヒドッ!」

「…」

「無視かい!」

「朝っぱらからテンションたけーんだよ、バカ女」

なぜか朝っぱらからテンションが低い隼人に、なぜか朝っぱらからバカ女と開口一番で言われてしまった。
ホワット?なんで?

「バカ女とかって君は朝っぱらから口が悪いよー」

「事実だろうが」

「否定できないこというんじゃないタコヘッド」

「ぁあ゙」

隼人は単純バカだから、タコヘッドって言うと絶対怒って振り向いてくれる。
あは、今日やっと顔まともに見たや。
でもなんかやっぱり不機嫌らしく、眉間の皺がいつもより五割り増しくらいに深く跡付いていた。
うわー、こいつ絶対歳とったら皺だらけだな。
想像してみて思わず含み笑いをしたら、ますます頭にきたらしい隼人は私のデコに強烈なデコピンをくらわした。
アウチ!なんだこいつは!
デコピン反対!

「ぬっほぉ!イッターイ!隼人、これは婦女暴行!」

「ぬっほぉって…安心しろ、お前は女じゃねえ」

「なぬっ?!」

「しいて言えばあれだ、あれ…ただのバカ」

「それはお前だバカ寺が!」

私を何かに例えようとして、なんかなんにも思いつかなかったらしい。
あははは、隼人カッコワリー。
そう言ってちょっとからかったりしたら、いきなりどこからか隼人はダイナマイトを取り出してきた。
え、あ、マジ?
前に山本が「なんでアイツいっつも花火持ち歩いてんだかなー」アッハッハー的な感じで笑い飛ばしてたけど私知ってんだよ!
あれ本物だからね山本ー!
助けて!

「果てろ」

「ちょっ、おま、本気でバカだろ!いたいけな一般女子になにしようとしてんだ!」

「だから女じゃねーよお前は!」

「少しは私をいたわれ!」

導火線に火が点いた。
えー、どうしよ。
あ。
良いこと思いついた。

「あっ!ビアンキお姉さま!」

「姉キ?!グハッ!」

隼人の後ろを指差して、隼人も後ろを向いた瞬間に素早く鳩尾にパンチを入れた。
あらら、さすがビアンキお姉さま効果だ。
マフィアのくせにこんなに簡単に隙つくらされちゃうなんて、私のほうが戦闘向いてるかもな!
導火線を足で潰して、爆発しないように火を消した。
隼人は胸元に手を当てて、煙草を落とした口で呼吸を整えてた。
鳩尾にだもんね、そりゃ息できないや。

「て、め…。卑怯だろ!」

「丸腰の女の子相手にダイナマイト使うアンタに言われたかないわ!」

「ゔ、」

「あーあ、学校着いたらツナにちくっちゃおー。“隼人が女の子襲ってました!”って」

「十代目が誤解するだろーが!」

「…私の言うこと聞けたら勘弁してあげても良ーよ」

ニーッコリとした笑みを万遍無く見せ付けて、立ち上がった隼人を威圧しながら言い放つ。
おっもろー、冷や汗だらだらなってるし。
ビアンキ姉のこともあるんだろうけど、やっぱり女苦手なのかね。

「けっ、誰が聞くか…」

「ビアンキー」

「ガハァッ!」

「聞かないと名前連呼するぞー?」

「バ、やめっ!」

「ビアンキビアンキビアンキビアンキ…」

「ガッ!グゥッ!わかったっ!」

名前だけでも結構腹にくると知った。
よっしゃ、今度からコレ使おう。
なんか途中でエスに目覚めそうになったのは内緒だ。

「…性悪バカ女」

「んん?また苦しみたいのかい隼人君?」

「聞いてやっから早く言え!」

なんか最初から機嫌悪かったせいか、隼人のイライラが増えていた。
ありゃま、遊びすぎたね。
まあどうせ隼人の機嫌悪さの原因はツナと一緒に学校行けなかったからとかだろーけど。
みみっちい男だなー。

「いよーし。そこに立って目をつぶれっ!平手一回で許しちゃる!」

「は?平手?」

「数々の暴言に傷ついたんだからそのくらい当たり前でしょー」

納得いかない顔をしてたけど、よほど愛する十代目に誤解のかかったことを言われたくないのか素直に立って目をつぶった。
んー、なんかツナが羨ましいぞー。

「早くしろ」

「そんなにぶたれたいの?」

「早く学校行って十代目にお会いしてーんだよ」

「……ゲイ?」

「はっ?なに言って…っ?!」

「ん、」

チュッ

「……」

「…おーい」

「……」

「隼人ー?」

「……」

「戻っといでー」

「…ハッ!名前、てめ、な…っ?!」

一瞬魂が抜けたかのように一時停止していた隼人は、意識が戻ってきたとたんに真っ赤になって慌てふためいた。
あー、なんだカワイイなコイツ。

「はじめてー?ファーストー?」

「な、ば、なにしやがんだ!」

「良いじゃんべつに。気にすんな!」

並中が見える場所に居たから、なんかちょっと気恥ずかしくなって学校まで私は走りだした。
後ろでなにか言いながら追い掛けてくるヤツがいるけど、今はそんなこと気にしてらんないもんね!

「私もファーストよー!」

だからおあいこで良いじゃない?



タバコ味のキス
そんなに苦くもなかった、かも


「ツナおはよー!」

「おはよう。名字と獄寺君二人で遅刻?」

「あのねー、さっき隼人が女の子に襲われてたよー」

「えーっ?!獄寺君が?!」

「何言ってんだバカ女!」


2007..


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -