dream | ナノ


愛してるだなんて言葉が一番似合わないあの人が一番愛しているのは戦闘の中で見え隠れする殺伐とした狂気。狂気に快楽を魅入だしアクマの毒塗れの血粉末を浴びながら笑うその姿を初めて見たとき、私の心は攫われた。マスクの取れた素顔は悪魔の様で、彼の周りは地獄に成り果てる。美しい、美しい、美しい。見たことの無い血の雨が私を濡らしていくことも、まるで彼に祝福されている様で幸せだと感じたのを覚えてる。

「師匠」私が声をかけても彼は振り返らない。振り返ってもらいたいわけじゃないから良いけれど、狂喜に染まった表情が見えないことに落胆した。私が手にしている彼のマスクも血塗れの紅に染まっている。美しい。彼が構成する世界は、私の欲求を満たし殻を詰め恍惚をもたらすのだ。美しい、美しい。幸せなのだろう、彼の世界に感化され逝く私は。

「おい」差し出された掌にマスクを置き彼を見つめる。舌なめずりをしたままの彼は私を見たあとにやりと笑んだ。ああ、どうにかなってしまいそう。目が眩みそうになるのを耐えながら地面に視線をやれば、彼の掌に置いたはずのマスクが地面に落ちたのが見えた。「おい」至極楽しそうに彼は言った。「興奮してんだ、殺ろうぜ」神狂いに手が伸びる。

「はい、師匠」ああ、貴方の世界に私も居れるのですね。



  

 
   に
     さ
  れ

    
  は
     

 
   る



悪魔に魅入られた蝶は羽を散らせ狂気に染まる

2009.1.1

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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