dream | ナノ
素早く自分と第七班分の勘定を済ませたならカカシの腕を掴み、おやっさんとアヤメに礼を言ったなら一楽の外に出る。
お礼を叫ぶナルト達の声を背に、振り返らず手を上げ返事を返せば我に返ったらしいカカシが引きずられていた態勢を整え大人しく私の隣を歩いた。
その顔は至極怪訝そうだ、何故。
「名前って本当たまに男前だよね……で、どこ行くの?お前のことだから期待したいんだけど期待しちゃいけないというかむしろ嫌な予感がするんだけど」
「お前も大概失礼だな。だがまあ期待していろ、きっと好みの娘が一人は居るはずだ!まず始めは図書館から行くぞ。その次が団子屋で次は病院だ」
「……ごめんなんか女の子紹介してくれるらしいのはわかったけどなんでそーなる?」
「前の彼女にはフラれたんだろ、あれだけ影を背負っていればどんな馬鹿でも察せるぞ。まったくお前はいったい何をやらかしたんだ?あれだけ結婚を意識していたというのに……あの時は話をかわされてどんな娘かも聞き出せなかったがもう逃さないからな。今後紹介する相手の参考にするから遠慮なくすべて話せ。恋の傷は新しい恋をするのが一番の治療法と言うからな!あ、今から紹介する娘は外面は良いが気が強く裏表が激しいタイプだ。だが基本的に良い娘だぞ、お前の日常に関するだらしなさを矯正させてくれること請け合いだ」
「そんな娘イヤなんだけど…」
「む、そうか。なら…」
我が儘にも私が紹介しようとする娘達を片っ端から拒否していくカカシに流石の私も顔をしかめ始めた。
なんだこいつ、私の友人にはカカシと並んでも遜色無いほど器量が良く素晴らしい人材のオンパレードだというのに。
独り身であり出会いを求めているという条件を揃えた友人達のストックが遂に消え失せてしまえば、カカシの相手として紹介できる人材が居なくなってしまい私はガックリと肩を落とした。
なんだ、なんなんだこいつは。
「会いもせずに全員拒否だなんてお前はいったいなんなんだ。なんでそんなに頑なに拒否する何事だお前。そんなに前の彼女が良かったなら何故梃子でも離さなかったのだ嘆かわしい!」
「だからね、その彼女ってのもお前が勝手に、」
「大体お前の主張を纏めあげたならな、器量が良く優秀で裏表が存在せず皆に好かれ、他人を思いやることを忘れずしかし時には厳しく周りを鼓舞し己も厳しく律する男前だが思い込みが激しい所もあり一直線な為どうにも放っておけない娘、だなんて………いるか?!どこにいるんだそんな奴!」
冷たい風が吹く路上のど真ん中で不満をつらつら述べたなら、片手で額を覆い空を見上げたカカシに私はフンッと鼻を鳴らした。
こいつはあれだ、女に夢を見すぎているのかもしくはフラれた反動で頭がおかしくなったに違いない。
私の友人には器量良しで優秀な娘が多いには多いが、一人は思いやりは存在するが裏表の塊のような娘だし、また別な娘は皆に好かれるような大人しい娘だがまかり間違っても男前とは言えない。
男前の娘も居るには居るが少し我が儘で無駄に敵を作るタイプだし、己に厳しく周りにも厳しい娘も居るが言ってはなんだが男前過ぎて隙がなく、そして現実主義者な為か思い込みでの行動は一切しない。
居ない、居ないぞ、既に既婚である友人を含めても、そんな娘は誰一人として見当たらないぞ…!
頭を抱えてぐぬぬっと唸りながら脳内検索をフルで酷使する。
一人、一人くらいはこの広い木の葉に存在するはずなのだ。
一番候補として真っ先に浮かんだのは紅なのだが、紅も思い込みでの行動は滅多にしない人間だ。
その上紅とカカシは昔馴染みであり同期であり気の置けない仲である。
今さら紹介も糞もない以前に紅は昔からアスマ一筋、紅とアスマを昔から全力で応援している身としてはもうすぐでくっつきそうな二人の間にカカシを投入して三角関係を展開させるなどもっての他である。
カカシと紅を天秤にかけたなら迷いなく私は紅の味方をする、悪いなカカシ。
紅が駄目だとしたら、他にいったいどこにそんな人材が…。
「いやー……あのさ。俺としてはそんな気張ってもらいたくないというか…」
「甘い!」
「逆ギレしないでよ………あ。なら名前、紹介はいいからさ、相談乗ってよ」
閃いた、と言わんばかりにニコニコと話を持ちかけたカカシに私はパッと顔を上げた。
相談…紹介よりも相談…。
ということは、あれか。
もはや既に新しい恋のお相手が存在するということか?
「なんだお前…そういう事ならもっと早く言え。無駄に悩んでしまったではないか」
「うん、なんかまた自己完結したよね今。でも良いや……で?胸焼けするほど思いやりに溢れる優しいお前は俺の相談に乗ってくれるデショ?」
「当たり前だ!以前も言ったが私がお前を全力で応援しよう!なんでも相談すると良い!!」
「本当無駄に男前…」
ニコニコと笑みながら、私の手を掴みずんずんと歩き始めたカカシに引きずられる形で歩みを始める。
このままでは寒いからということでどうやら今からカカシの家へと向かうらしい。
ふむ、確かにそうだな、正直言えば団子くらいは食したかったがここはそうも言ってられまい。
私の食欲は禁じ、カカシの行く末を全力で応援しようではないか!
「そういえば長い付き合いだがお前の家は初めてだな」
「ねー、本当長かったっていうかなんていうか…」
「邪魔しても良いのか?バッタリ出会して修羅場突入とかは勘弁願いたいのだが…」
「大丈夫だいじょーぶ。テリトリーにいれちゃえばこっちのもんだから」
「うん?」
なにやら会話が噛み合っていない気がするが。
しかし一楽に居た時とはうって変わり、上機嫌に鼻唄でも歌いそうなカカシに私もなんだか楽しくなっていく。
さあ、木の葉の若葉達よ!私はカカシの憂いを晴らせそうだぞ!明日は楽しみにしてるが良い!
「カカシ、そんなにガッツリと掴まなくとも私は逃げないが」
「気にしない気にしない。家着くまでの辛抱だよ」
「何故だ?」
「着いたらわかるって」
……なんだ?
よくわからない嫌な予感に訝しめば、繋がれた手にギュッと力を込められた。
20150115