dream | ナノ
「ひーめさん、なにやってんの?」
「ん?……なんだ佐助か。気配を消して近づくな、心臓に悪い」
「はは、俺様にとっちゃ足音たてる方が難しいんだけどね」
庭に出て何かをしている武田の姫に声をかけた。
天気は良好、だがこの箱入りと言っても過言ではない姫さんが一人で庭に出る行為は珍し過ぎることだ。
頭上を眺めていた姫さんにつられて俺の視線もそこに移した。
眺めていた対象を目に入れてから、彼女が外に出ていた理由に潔く納得する。
だがその瞬間彼女は歩を返して館の中へと引き返そうとしてしまった。
あらら、素直に言えばいいものを。
「姫さーん、いいの?言ってくれれば俺様が……」
「忍隊の長を彼のような事で使ったとならば父上に叱られてしまう」
「いやあ……大将は絶対怒んないと思うけど」
逆に大手を振って使われそうだ。
「私に構わず、任に就け。父上か幸村に減給されても知らんからな」
「大丈夫だよ、俺様今その二人から解放されたとこだし」
「しかし…」
「少しは甘えなって、な?」
「…ならば、頼んだ」
頬を赤らめそっぽを向きながらも頼みごとをする彼女の姿に、思わず口元が緩みかけた。
本当、誰に似たんだか。
この可愛らしさがあるかぎり、本当に大将の子なのか?と疑問を持ちたくなるのも無理はないだろう。
「……調理も頼んだぞ」
「はいはい、っと」
食欲の秋
「はい大量ー。なに作る?」
「…栗ご飯と栗饅頭」
「(可愛いなあ)」
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