dream | ナノ

トリップして一ヶ月は過ぎ、テニス部ともなんとなく接触したりガッツリ絡んだりそれなりに平和に過ごしてた今日この頃。
一月しか経っていないという事実が信じられない、なんだかんだで濃い生活を送っているんだなと染々感じる。
住んでる街一帯の探索も終わり、学校の適度なサボり方を模索したりと私は新しい生活に慣れ始めていた。
晴れた日の昼休みは雪、麗奈、私の三人で屋上で過ごすという習慣が一ヶ月経った今当然のように出来上がっている。
私もタダで駄菓子食べれるからまったく問題ない所かむしろありがたいし、雪と麗奈は相変わらず可愛いしアホで楽しいからまったく苦じゃない。
そんなこんなでいつもと同じように駄菓子を摂取していた私は、時期外れの転入生が今日二年に来たらしいという情報を雪から教えてもらっていた。

「…こんな中途半端な時期に?」

「そー!名前は新学期ちょうどだったからナイスタイミングだったけどさ、学期始まって一ヶ月後に学校変わるとか変だよねー、それに可哀想」

「親が頭おかしんじゃね」

「かもねー」

「二人とも、それかなり失礼だよ」

「ごめん麗奈ー」

「失礼な奴だな雪は」

「え!名前が言い出した癖にー!」

「忘れた」

「痴呆か!」

「まったく二人ってば…」

バカなんだから、と呟きながら頬に手を添えた麗奈は、言葉とは裏腹にいつも楽しそうな表情で私たちを見ているのを知っている。
雪曰く、麗奈は私達の悪ノリにしか聞こえないこの会話を随分と気に入ってくれてるらしい、楽しんでくれてるなら本望だ。
時期外れの転入生。
このワードを聞いて真っ先に思い浮かんだのはキングの従兄弟である。
またあいつ通り魔的なことすんじゃないのかな…転入生可哀想。

「二年っしょ?なんで皆知ってんの?」

「むしろあんな噂になってるのに知らない名前がおかしい」

「え、マジで?あー……今日ほとんど寝てたからな」

「私と話してても頭あげてくれなかったもんねー」

「ウゼーとしか思ってなかった」

「ひど!」

「ほれ、許せ」

「良いよー」

チュッパチャップスを差し出せばおとなしくなった雪の頭を反射的に撫でた。
小動物みたいで可愛いんだよな、でかい飴だから口に入れると頬袋が片方に出来てなんとなく加護欲がわく。
ブラックサンダーブームは過ぎ去り今のブームは飴らしい、気付けば何かしら舐めてる。
なんで太んないんだろ…羨ましいわ。

「…で?なんで噂なってんの?」

興味を引いたので話を進めてみた。
噂になるくらいだ、何かしらあるんだろう。

「私もまだ見てないんだけどねー、なんか見た目からして凄いらしいよー」

「どんな?」

「女でね、赤毛にピンクのカラコンつけてパンツ見えそうなくらいミニスカなんだってさ。初日なのに基準服着ないで私服だって」

「…まあ、そんくらいなら普通じゃね?」

基準服は基準服なだけで、別になにかイベントがない限りは私服で登校しても許されるのが氷帝だ。
確かに転校初日で私服は目立ちそうだけど急な転校で制服間に合わないとかはざらにあるし、私服登校の生徒も少ないながら居るには居る。
ピアスやネックレス、ブレスレットなどの装飾も許されているから私も遠慮なくつけてきてるのが現状だ。
赤毛っていうのも…銀髪の不良が友達にいるしカラコンもここの生徒会長様がすでにあれだから問題ねんじゃねとしか思えない。

「でもねー、転入試験全部満点って先に噂流れてたからどんなガリ勉なんだろーって皆言ってたんだよー。ギャップあるから噂も広がるってー」

「頭悪そうな見た目の勉強できる奴なんていっぱいいんじゃん。勝手に妄想してたこっちが悪いっしょ」

「あー、名前もそのタイプだよねー」

「頭悪そうってか。どつくぞ」

事実だけど他人に言われたらカチンと来るわー。
中学生の授業だから大丈夫なだけで、実際に私は勉強が苦手な部類だ。
頭良かったならフリーター生活なんて送ってなかった。

「ていうか、見た目もそうだけど転入生が噂になった原因は言動だよ」

「言動?」

「自己紹介の時点で男子の硬式テニス部マネージャーやりまーす!って宣言したんだって、その子。別に言わなくても良いのに。二年レギュラーの鳳君のクラスみたいなんだけど、ずっと彼に色目使ってたって情報だし。男子とは話すけど女子は一切無視してるって……変な子だよね。可愛いみたいだけど」

「ただのビッチ」

「ブハッ!名前それ言っちゃダメー」

「笑ってんじゃん。てか麗奈詳しいね、調べたの?」

ファンクラブの会長様だもんな……でもそんなすぐ調べるほどこの子素早くなかったはずだけど。

「同じクラスだっていうファンクラブの子たちが一斉に血相変えて私のとこに来たの。会長、テニス部が変態に目をつけられました!って急に言われたからビックリした」

「ッ…ブフッ!へ、変態…っ!ふっ、あっはははっ、なにその子たちユーモアあるっ!てか初日で変態扱い!可哀想!ヒーッ、アッハッハッ!」

「ちょっ、笑い方ヤバイ!」

ツボに入っただけだ、ほっとけ。

「グッ、フフッ……フゥ!で、変態に目をつけられたテニス部を応援してるあんたらは何かするの?」

「なにかってー?」

「だってその子マネージャーやるっつってんでしょ?男としか喋んないとかって明らかにテニス部狙われてんよ」

「んー……マネージャーやるにしろやらないにしろ、彼らもそういう子をマネージャーにはしないと思うから別に…もしなったとしても、マネージャーだってテニス部の一員なんだから私は応援するよ」

「ふーん」

なんか…あれだな。
麗奈はやっぱ男というよりアイドル応援してる感じなんだな、狙われてもどうでも良いみたいだし。
健全な女子中学生としては意外だ……まあ雪はなんとなくハラハラしてるしてるみたいだけど。

「転校生可愛いんだってよ雪ー」

「ど…どうしよう…」

動揺してるーかぁわいー。
てか今さら危機感感じるって遅くね。

「一昨日一緒に帰ってたじゃん、大丈夫っしょ」

「そうだよ、近林君も満更じゃない感じだったよ雪!頑張れ!」

「近林っつーんだ、へー」

「ぎゃあああっ、恥ずかしいいいっ」

ニヤニヤしながらエールを送る。
一昨日はなんでか知らないけれど、いつのまにか交流を深めていたらしい雪が準レギュラーの想い人とテニス部の部活が終わったあと一緒に帰っていた、ので私と麗奈はニヤニヤしながらそれを尾行したという楽しいイベントがあった。
雪は尾行されてたのを知らないからなんでうちらがこんなにニヤニヤしてるのかはわからないみたいだ、やっべーウケる。
あれは楽しかった…用があったから最後まで見れなかったけど雪ガチガチだったもん。
近林だっけ?あいつはあいつで雪のガチガチ具合を楽しんでたなあれは、わざと頭ポンポンして顔を真っ赤にさせてる時点でカップルがイチャついてるようにしか見えなかった。
リア充よ、末永く爆発してろ。
思い出しているのか、顔を真っ赤にしてギャーギャーうるさい雪を麗奈がおとなしくさせてる。
それをボーッとしながら眺めていたら、ガチャッという音をたてながら屋上の扉が開いたのに気付いてなんとなく視線をそちらに逸らした。
あ?こんな時間に珍しい。

「早くお昼ご飯食べなきゃーっ…………は?」

でかい独り言を呟いて屋上に来た人は、駄菓子を貪ったり顔を赤くさせたりそれをどついてる私たちの姿を確認した瞬間瞬時に顔を歪めた。
フリフリとした私服に目に痛い赤毛、ショッキングピンクの瞳をしたパンチラしそうな破廉恥女……あ、転入生ってこの子か。
思った以上に髪赤いな、ヅラじゃねこれ。
それにしても目立つ。
いや可愛いけどね。
てかは?ってなには?って。
こっちがは?って感じなんだけど。

「……なんであんた達なんかが屋上にいんのぉ?」

「…え」

ふてぶてしい態度のその転入生と思われる女は、クルクルと自分の髪を弄りながら完全なる上から目線で私たちに言ってきた。
雪がびびって声を漏らしたら、転入生はますます見下した表情でこちらを睨み付ける。
…意味わからん。
つか初対面でこの態度って私並みにふてぶてしい奴だな。
タイミングが良いのか悪いのか予鈴が辺りに響き渡った。
弁当食わなくて良いのか、あと五分しか昼休み無いぞ。

「テニス部いると思ってわざわざ階段のぼって来たのにぃ、もうまじ信じらんない!」

予鈴を聞いて地団駄を踏みながら愚痴り始めたその子に上がりそうな口角をなんとなく抑えた。
勘違い乙ー。
何を信じてたんだ、テニレギュは皆仲良く屋上でお昼を過ごすという王道を信じてたのか。
部活同じってだけで昼も一緒とかあり得ないって思わないのかな……私の中にある常識じゃあり得ないぞ。
てかがっつりテニス部目当てだねこの子、男マネの言い方からするとビンゴなんじゃね。
それか熱狂的なテニス部ファンかね、雑誌に乗るくらいだから全国にファンがいてもおかしくはないし。

「ちょっとあんた達!まさか今までここにテニス部居たんじゃないでしょーね!」

「雪、麗奈、教室もどんぞ」

「え…あ、うん!ちょっと待ってー…っ」

「シカトすんじゃないわよ!」

「ちょっと貴方、落ち着いて?ここには最初から私たちしか…」

「麗奈ー、確か次体育でしょー?着替える時間無いよー」

「え?!あ、忘れてた!」

悪気はないんだろうけど話が途中なのにも関わらず荷物を持って駆けていった麗奈にちょっと呆れた。
着替えてから屋上くれば良かったのに…やっぱなんか抜けてる子だな。

「なんなのよ、あんた達!」

「名前行こー」

なんかさすがに可哀想な気がしたけどシカトした自分がそう思うってどんだけ、と思ったからやっぱそのまんまシカトして雪に引きずられるまま屋上を出た。
雪は絶賛不機嫌中だ、顔に力入ってるからわかりやすい。
麗奈に言った言葉も私を引きずったのもわざとっぽかったし……なんだ、生理的に受け付けなかったか。

「どしたの」

「なんか…無理!」

あー、ああいう初対面から全力で噛みついてくるタイプは雪無理だろうねえ、少しチキンだから。
それにしても…随分積極的な子だったな。

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