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「えーと、お名前は?」

「カガリです」

「カガリちゃんね、今いくつかな?」

「二十歳です」

「えっ!?」

「えっ?」



その後、慌てて謝罪したジュンサーさんによると、私の事を未成年だと思っていたらしい。道理で対応が緩いわけだ。しかもこちらでの成人は、外国と同じようで18歳。最低でも3歳はサバ読んだ事になる。恐るべし、東洋の神秘。(決して、私の身長が低いとか、童顔とかじゃないはずだ。東洋人はみんな幼く見えるんだ!)ちなみにここはバトルサブウェイから移動してライモンシティの警察署。パトカーでお迎えされて、警察署に向かうときは犯罪者の気分になりました。私は無実だ!そんな事を考えてる間も、ジュンサーさんとの尋問は続く。出身はどこか、何故サブウェイに来たのか、ポケモンは持ってないのか……。全ての質問に「わからない」と返す。ジュンサーさんは苦笑いを浮かべて私を見ていた。ジュンサ―さんからしたら、私は成人にもなって家出して駄々をこねて家に帰りたがらない、大人げない人間に見えているんだろう。……めんどくさいヤツでごめんなさい。でも本当の事を言ってももっと困らせるだけだから、私は気づかないフリをする。



「ねぇカガリさん?」

「はい」

「私達警察には貴方を保護する義務があるわ。でも成人しているならそれは強制じゃなくなるの」

「……はい」

「記憶喪失で入院するのも、私達と協力して家族を探すのも、これから一人で生きていくのも、貴方の自由よ。自分で決めなさい」



「冷たい言い方で悪いけどね」そう言い残して、彼女は席を外した。私にゆっくり考える時間をくれたのだろう。………とりあえず入院は却下。記憶喪失ではないし、本当の事を言ったら精神科に入れられてしまう。第一そんなお金、一文無しの私にあるはずがない。家族を探すのは……不毛だ。この世界に存在しないものを探すなんて(いや、ないと決まったわけではないけど)……。それより帰る方法を探したほうが合理的な気がする。つまり選択肢はあたえられているようでその実、ひとつしかないわけだ、が……………。



(…………自由、か)



自由だと言われると、困ってしまうのは日本人の特徴か、それとも私だけのなのか。何の規制もない自由は、苦手だ。0から10学べと言われているのと同じだと思う。身動きが、とれなくなってしまう。こういうとき、私は随分と守られて生きてきたのだと自覚せざるおえない。親に、友達に、法律に。私はずっと守られていた。………ここに私を守るモノはない。一人で、生きていかなければ、いけないのだ。



「……まぁ、なんとかなるか」

「なんとか、とは?」

「一人でもなんとか……って」

「……お一人でどうするおつもりなのですか」

「ノ…ボリ、さん?」




静かな黒は怒りを湛えて





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