>





クダリ視点





「挑戦者、20両目を通過。まもなく21両目に到達します」



アナウンスが車内に流れる。21両目、ぼく達のいるところ。サブウェイマスターのいるところ。もうすぐあの子達がやってくる。ぼくもノボリもすっごく楽しみ!ノボリなんて、顔はいつも通りなのに手が震えてるの。武者震えかな?ぼくも楽しみでドキドキしてる!



「またお会いしましたねトウヤ様、トウコ様」

「まってたよ!」

「今日こそ勝たせてもらいますから」

「覚悟してくださいよ!」



それから何時もの決まり文句を言って、みんな真剣な顔になる。さぁ、今日のトウヤ達はどんなバトルを見せてくれるんだろ。考えるだけでわくわくしちゃうね!でもね、今日はなんだかそれだけじゃないみたい。バトル以外に何か起こりそうな、そんな予感。



「ギギギアル、ボルトチェンジです」

「アイアントはいわなだれだよ!」

「ヒヒダルマ火炎放射で迎え撃て!」

「ランクルス!サイコキネシスで援護して!」



みんなの指示が飛び交う中、天井に異変が現れた。たぶん気づいたのぼくだけ。ポケモンがテレポートをする時の時空の歪みみたいなの。でもそれよりずっと大きい。その歪みから人が出てきたの。音にするとずるって感じで。突然だからぼくすごくびっくり!



「クダリ!バトルに集中してくださいまし!」

「ノ、ノボリたいへん!あそこ人!」



指を指した方向を見てさすがのノボリもびっくりしたみたい。目を見開いて固まっちゃった。でもその間も歪みから人はどんどん出てきて、落ちちゃった。べしゃっ!て。落ちた場所、フィールドの真ん中。攻撃がぶつかるところ。みんなの攻撃が、吸い込まれるみたいに、その子に向かう。



「お客様!」「危ない!」

「へっ?」



声に出したけど、遅かった。攻撃がぶつかり、爆発みたいな音と風が、フィールドに響いた。すぐ目を開いたけど、爆煙で前が見えない。…………もしかして殺っちゃった?ちらっと横を見ると、ぼくと同じで最悪のこと考えてるみたい。ノボリ顔真っ青。ハッ!と、我に返ったノボリが煙を掻き分けて駆け寄る。ぼくはそれに着いて行った。先にその子を見つけたノボリが抱き起こして声をかけている。反応は、ない。



「どう?死んでない?」

「思ったからといって口に出さないで下さいまし……意識は失っていますが、特に外傷はないようです…」

「え、うそ、あの攻撃で?」



4匹のポケモンの攻撃を同時に受けて無傷なはずがないよ!しかも攻撃したのはぼく達のポケモンだ。現に爆発に巻き込まれた座席が抉れてひどいことになってる。(また直してしてもらわないと)それほどの威力のポケモンの攻撃を受けて無傷なんて………………おもしろい!すっごくおもしろいよ!



「ぼくその子医務室連れてく!ちょうだい!」

「ええ、お願いしますクダリ。わたくしはトウヤ様とトウコ様に謝罪して参りますので、くれぐれも、慎重に…」

「わかってるって!」



はやくはやく!と、急かすとノボリがその子の膝裏と背中に手を回して渡してきたから、マネしてぼくも抱く。最初に思ったのは小さいなぁってこと。トウコとあんまり変わんないんじゃないかな。もしかして、新人トレーナーでテレポートに失敗したのかな?でも近くにポケモンいなかったよね?聞きたいのに、聞けない。顔を覗き込んだけど、気付くことはなくて、固く閉じられた目が残念。医務室に着いて、寝かしてもずっと開かない。ぼくは聞きたいこといっぱい、いっぱいあるのにな。



「ねぇ、早く目覚めてよ」




そして始めに名前を聞かせて






prev | next



←モドル



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -