必要以上に側にいるわけでもなく、かといって離れすぎているわけでもなく。そんな付かず離れずな鬼道と不動は恋人同士だ。

「……」
「……」

パラリと文庫本の紙の擦れる音と二人の呼吸音だけがこの静かな部屋に響いていた。不動と鬼道は背中合わせに互いにもたれあって、それぞれ本を読むなり携帯を触るなりしていた。二人はこうしている時間が何より好きだった。

「…円堂が結婚したそうだ」
「んー…意外だよなぁ」

飽きてしまったのか、鬼道はパタンと文庫本を閉じてテーブルに置いて、ふと思い出した円堂が結婚した話を口にした。それに意外とは言うものの全く意外ではなさそうに不動は答えた。それから「木野とするのかと思ってた」とも言った。

「あぁ…まあ木野には一之瀬がいるからな」
「あー、そっか」

そこで一旦会話は途切れた。そしてその10秒後に、鬼道が再び口を開いた。

「…俺達もそろそろ結婚だな」
「え、まじで?」
「嫌か?」
「嫌じゃない」

不動はケラケラ笑って、それから結婚かと嬉しそうに目を細めた。不動の嬉しそうな声を背中で聞いた鬼道は、机の上に置いていた紙袋に手を伸ばして、中から小さな箱を取り出した。それからその箱を不動の横にことりと置いた。

「開けてみろ」
「……あ、指輪…」
「もう少し嬉しそうにしろよ」
「ん…ありがとう」

それを左の薬指にはめて、上に手をかざした。きらきら光るそれに不動の顔からは笑みが溢れる。

「今日鬼道クン指輪してたの、最初から気付いてたんだぜ」
「…だと思った」

鬼道の左の薬指には不動と同じものがきらきらと光っていた。




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