「なあ、鬼道ちゃん」


何か言いにくいことでもあるのか、不動は肩越しにこちらへ向き視線を泳がせた(因みに不動は俺の膝と膝の間にちょこんと座っている)。どうかしたのか?と微笑んでやれば可愛らしく染まる頬。どうしようもなくいとおしい。


「今日は…その…」


と、更に少しだけ視線を泳がせてから、どこにも行かないのか?と不動は訊ねてきた。それもそうだ、帝王学こそ完璧にこなしてきたが俺には恋愛経験と言うべきものが皆無なのだ。だからこそ相手が何をすれば喜ぶのか皆目検討もつかず、今まで自分が持ち得る財力権力を駆使しそれこそ様々な観光地やらレストランやらに連れていったのだから、今現在のようなゆったりとした時間を2人で過ごすなど初めてにのである(もう付き合って半年以上は経っているのに関わらず、だ)。それを踏まえれば不動の質問は当然であり、俺の予想通りであった。


「お前は嫌だったか?」


ちゅ、と項にくちづけをして問えば、ふるふると首を振る。


「嫌じゃ、ない」


「それは良かった」


「たまには、」


たまにはこういうのも、いいな
そう言って不動がくるりと此方に体を向けたので、


「そうだな」


頷いてから深い深いくちづけを交わした。


一番大切なことを教えてくれた風丸と円堂に、後で礼を言っておこう。




(一番大切なのは
 貴方と一緒に居ること)
(ただ、それだけなの)






PinkAqualium/春那さんから




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