俺の恋人は滅多に甘えてこない。

俺の恋人というのは不動明王のことだ。
不動はどうやら素直に甘えたりできないらしい。いわゆる恥ずかしがり屋というやつだ。
まぁ、俺的にはもう少し甘えたりしてほしいのだが…

そして今、俺の部屋で滅多に甘えてこない不動がこちらに両腕を伸ばして
「きどーちゃん」と呼んでいる。
不動と俺の距離は2メートル程で向い合わせのお互い壁にもたれている状態だ。
あきらかに抱っこをねだっている。
…ど、どうしたんだ不動。
いつもはそんなことしてこないじゃないか。突然そんな可愛い顔で抱っこをねだられても困るんだが。
(んー…)

頭を抱えて考えていると、ふわっと不動の匂いがして…抱きしめられた。
「ッ!!?」
「…ばかだろ」
不動は俺の膝の上に向かい合わせに座って胸に顔を埋めた。
「…手伸ばしてんだから早くぎゅってしろ よな」
「あ、あぁすまない」
鈍い。と呟いて俯いた。

か、可愛いすぎるだろ…
チラと見えた不動の顔は真っ赤だった。
心臓がバクバクと煩い。
多分、不動には気付かれているだろう。
不動の背中に腕を回してぎゅっと抱き締めた。
「…鬼道ちゃん心臓うるさすぎ」
ふっと笑って顔を上げた。
「どうしたんだ。寂しかったのか?」
ふわふわした猫毛を撫でてやる。
俺はこの髪が好きなんだ。
少しくすぐったそうに目を細めた。
「……寂しかった」
「え?」
不動の口から寂しいという言葉が出るとは…。
「鬼道ちゃんが構ってくれないから。寂し かった」
あぁ、確かに最近は豪炎寺や円堂たちと作戦を練っていたから…
寂しい思いをさせていたのか。
「すまなかった」
「えー…やだ」
え?
俺は不動の顔を覗きこんだけど、すぐに顔を反らされた。
「…許してくれないのか?」
「………」
「…どうしたらいいんだ?」
不動はずっと黙ったままだ。
そんなに怒っているのか…?
「ふど…」
「ちゅーしたら許してやる」
「ッ!?」
不動はニヤニヤと笑っている。
……こいつ…
ふぅ…と息を吐いて、ゴーグルを外した。「きどーちゃ…」
ぐっと不動の顔を手で押さえると
ちゅ、ちゅと啄むようにキスをした。
心地好さそうに目を閉じている。
「ん…」
すこし開いた唇の間から舌をいれて、不動の舌を絡めとった。
「ふっ…んん…」
僅かな口のすき間から聞こえてくる色っぽい声が、鼓膜を震わせる。
頭がどろどろに蕩けてしまいそうなぐらい気持ち良い。
俺は息が苦しいのも忘れて、ひたすら不動の舌を弄んだ。
「…ッは、ん…っ!」
ぷはっと唇を離すと銀の糸が繋がっていてそれはやがてぷつりと切れて、落ちた。
「…は、鬼道ちゃんがっつきすぎ…」
目尻に溜まった涙を指で拭った。
「これで許してくれたか?それより大丈夫 か?」
大丈夫じゃねぇよ、と言って不動はへらっと笑った。
「もーいい許す」
「本当か?」
「うん。ちゅーしてほしかっただけだし」
「……」
なんて可愛いんだ。
しかも寝ているだと…
…久々に甘えてきたと思えばすぐ寝る。
本当は押し倒したい気持ちで一杯なのだがこれで充分だ。
明日はきっと今日みたいに甘えて来ないだろうな。

(…それでもいいか)

すーすーと規則正しい寝息をたてて眠る不動をぎゅっと抱き締めて瞼を閉じた。





猫のような君

for..黒麻さん

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