「ねえねえ剣城!」
「…んだよ」

ああまた煩いのが来た。毎日毎日毎日毎日「剣城ー!」って駆け寄ってきては言いたいことだけ言って風のように去っていく。俺に迷惑がかかってる事わかってねえのかコイツは。これじゃあまるで台風だ。

「あのねえ、剣城は好きな子いるの?」
「はあ?別に興味ねえ」
「そうなんだー!」

興味がないと言えば諦めるだろうと思ったのだが、どうやらその選択は間違ったようだ。松風は期待でキラキラしていた目をより一層キラキラさせて、にこにことアホ面で笑っている。なんだか松風の周りだけ花が咲いてるみたいだ。…いや、別に花みたいに可愛い笑顔とかじゃなくて、あくまで雰囲気の話だからな。

「俺はねーいるんだ!」
「……はあ」
「聞きたい?聞きたいよね!剣城聞きたいって顔してるもん」
「…結局お前何しに来たんだ」

はあと呆れて溜め息をついたら「溜め息ついたら幸せ逃げちゃうよ」と言われた。一体誰のせいで逃がしてると思ってんだ、この馬鹿は。そう言ったらまた話が変な方向に進んで、結局何もわからないままどっか行くんだろうから言わないけどな。
それにしても松風に好きな奴なんていたんだな。あの仲の良いマネージャーか?別に俺には関係の無いことだけど、まあ気になったし聞いてやるか。
すると松風がちょいちょいと手招きをして、いきなり顔を近付けてきたからびっくりした。何するんだと思ったら、耳元を手で覆うようにしてこそっと口を近付けてきたから、ただの耳打ちだとわかって一人で恥ずかしくなった。

「な、内緒だよ」
「…ん」
「俺ね、剣城が好きなんだ」
「は?」

それからぱっと俺から離れると「じゃあね」と真っ赤な顔をしながら台風のように走り去っていってしまった。松風の背中が見えなくなる頃、俺は真っ赤な顔を手で覆いながら、込み上げてくる恥ずかしさと訳のわからない嬉しさに、一人呻き声をあげていた。







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初天京…ですがどうでしょうか。書くのがとても楽しかったです。やっぱりこの二人は天使みたいに可愛いです。



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