些細な事で俺と倉間は喧嘩になった。
いつもならもうとっくに仲直りはしてる筈なのに、何故か今日はカッとなって思ってもいないことを、一番言ってはいけない事を叫んでしまった。

『お前なんか避妊しなくていいから付き合ってるだけだ!』


俺は倉間を傷つけた。




傷ついた、傷つけた




ふるふると肩を揺らしながら止めどなく溢れる涙を拭ってやろうと手を伸ばしたら、パシッとはたかれてしまった。当たり前か。あぁ、嘘だよと言って抱き締めてやれたらいいのに。泣かないでって囁けたらいいのに。

「…南沢さん、は、ずっとそう…思ってたんすか…?」
「……違う」
「…本当の事、言ってくださいよ」

下を向いていた顔を上げて、じっと俺の顔を捉えた。ずっと泣いていたからか、目が真っ赤に充血している。すると倉間はまた唇を微かに開いた。

「よく考えたら、そうですよね。…南沢さん女子に人気あるから俺なんかと付き合うのは、避妊しなくていいから、ですよね。南沢さん、舞い上がってる俺見て影で笑ってたんすか?」
「だから…っ」

ぐんっと腕をこちらに強く引いて、倉間の顎を捉えると、その薄い唇に噛み付いた。よくドラマとかである例のシーンで、とりあえず今はこの口を黙らさないと、あのまま進んでいたら別れましょうとか言っていたに違いない。倉間は目を見開いて俺の胸を押して抵抗するが、それよりも強い力で後頭部を引き寄せる。

「んん…っ」

苦しそうな声と共に倉間は眉をぎゅっと寄せた。ぺろと唇を舐めてから、こつんと互いの額をくっつけた。

「…さっき言ったの、嘘だよ。……カッとなってて…悪かった」
「お、俺のほうこそ…そんな、……別れるのかと思った…」
「…ばーか」
「なっ…」
「お前が何て言おうと俺は絶対別れる気ねぇから」

覚悟しとけよ?








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青春ボイコット様に提出!
楽しい企画ありがとうございました。

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