涙が一筋白い頬を滑ってパタリと床に落ちた。次いでパタパタと雫が2つ3つ。コイツでも涙を流すときはあるんだな。俺は不動の目から溢れる涙を拭おうともせず、ただただ溢れては滑り落ちていく涙を見ていた。そもそも俺は不動が何故泣いているのかを知らない。が、原因は俺にありそうだ。不動と呼び掛けてみても、たいした反応は返ってこなかった。コイツは一体いつまで泣き続けるのだろう。いつか干からびて死んでしまうのではないか。それは嫌だと思い再び名前を呼んでみる。不動の指がぴくりと動いて、薄い唇が開かれた。鬼道がいなくなった夢を見た。とか細い声で紡ぎだされた言葉はやはり俺のせいだった。涙は相変わらずぼろぼろとこぼれ落ちていく。こういう時恋人というのはどうすればいいのだろうか。暫く考えた後で、両腕を不動の背中に回した。果たしてこれで泣き止むだろうか。回した腕に少しだけ力をこめる。不動もおずおずとこちらの腰に腕を回した。俺はいなくならない、ずっと側にいる。そう言ってやるとクスクスと笑われた。不動の瞳からはもう涙は流れていなかった。

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