「む…」
珍しく鬼道より先に目を覚ました不動は、ごしごしと目を擦って体を起こすと伸びをした。
隣でまだすやすやと眠っている恋人を一瞥すると、まだ覚醒していない頭で昨日の事をぼんやりと思い出した。
今日は休みだからと、いつもより激しく互いを求めあった。
「…腰だる…」
はぁ、と溜め息まじりで呟いてふと時計を見る。
ベッドの脇のほうに置かれてあるその短針は8の数字を指していた。
…まだ8時かよ。
目は冴えているが鬼道が眠っているので何もする事ができなくてつまらない。
不動は再びもぞもぞとシーツを被って鬼道にくっついた。何も着ていないとやはり寒い。
ぎゅうっと肌と肌を密着させると素足を絡めた。
…トクン、トクン
胸に頭をつけると規則正しい心臓の音が聞こえてきて、なんだか安心する。そしてなんだか急に愛しくなった。
チラ、と少し首を上に傾けると整った鬼道の顔が見えた。
大丈夫、寝てる。
不動は少し躊躇いながらも鬼道に顔を近付けて頬にキスをした。しかし触れたのは一瞬で、すぐに唇を離した。
「…すき」
「…俺もだ」
「!!?」
鬼道の声がした。
パチリと瞼があいて紅い瞳と視線がかち合う。
「寝込みを襲うとはな…」
「ばっ…ちが…ッ」
「違うことないだろう?」
驚いて距離をとろうとしたらぎゅっと抱き締められて離れなくなってしまった。
不動は顔を真っ赤にしてバタバタと暴れて抵抗するが、力は緩まるどころか強くなるばかりだ。
「〜〜ッ離せばか!」
「離さない。」
ぴく、と不動の体が揺れてやっとおとなしくなった。
「おい、さっきのもう一度言え」
「は…、やだ」
「言わないと離さないぞ?」
そう言うとクスリと笑って不動の顔を覗き込んだ。しかし不動はちっとも言う気配を見せない。
「おい…」
「じゃあやっぱ言わない」
え?と聞き返すと不動は困ったように眉を寄せて小さく呟いた。
「…だって言ったら離すんだろ…」
「…っ」
そう言うと不動はシーツに顔を埋めて黙ってしまった。
まさかこんな言葉が返ってくるとは思っていなかった鬼道は何も言えなくなった。
「……それは駄目だろう…」
あぁ、なんて可愛い生き物なんだ。
不動はまだシーツで顔を隠したままだ。シーツを剥がすときっと顔は真っ赤だろうな、と鬼道は思った。
「…なぁ。」
「………なに…」
「…離さないから言ってくれ。」
「ばーか…」
「頼む」
バサリとシーツを剥がすとやはり顔は赤かった。
ゆらりと碧が揺れて微かに口が動く。
そして……




「…………好き」


あぁほんと可愛い。
頭のどこかで理性が切れた音がした。
不動の顔の横に手をついて上から見下ろす。
「もう離さないからな?」
「……ばっかじゃねーの…」
不動の呆れた声と溜め息を聞いてから静かに唇を塞いだ。




キャンディはじけた


title by:魔女さん


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