「南沢さん、南沢さん!どうです?コレ」
「ぶはっ」


飲んでいたジュースを盛大に吹き出してしまった。俺の口から吹き出た液体は、綺麗に弧を描いて部室のテーブルやユニフォームに飛び散る。げほげほと咳き込みながら、側にあったティッシュで拭いた。
それから俺は、隣でしつこく「見ろ」と言う後輩に、体ごと向き合った。目の前できゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐ倉間をじっと見詰めた。頭の上にはふさふさとした猫耳?がついていて、それを手でひょこひょこと触りながら「似合います?」と目を細めて聞いてくる。ヤバい、すっげー可愛い。

「…似合ってる」
「そうです?南沢さんに言われたら、なんか嬉しい」
「……」

ふいと倉間から視線を逸らして、なるべく見ないようにした。だって猫耳倉間があまりにもツボすぎて、部室なのにも関わらず今にも押し倒してしまいそうなのだ。
倉間はそんな俺の気も知らずに隣で耳を引っ張って遊んでいる。本人はたいそう気に入ったみたいだが、そんな凶器いつまで着けておく気なんだろう。

「なあなあ浜野速水!似合うか?」
「!」

おいおい待てよ倉間、そんな天使のように可愛い姿をあの二人に見せるなんて。ああ、まだあの二人だからいいものの剣城なんか見てみろ。顔が真っ赤だぞ…。いや猫耳倉間は可愛いから俺的にはオッケー(寧ろ推奨)なんだが、皆が見ている前でするのはちょっと許せないな。

「あっ、倉間倉間…」
「ん…?」

浜野は倉間にこそっと耳打ちすると、速水と行ってしまった。あんなにニヤニヤして、一体倉間に何を言ったんだ?
すると倉間はこっちを向いて、俺のジャージの裾をぐいぐいと引っ張った。俺は面倒臭いのを装って、頬杖をつきながら隣を見る。倉間は上目遣いでにこにこと笑いながら八重歯を見せると。

「にゃあっ」
「………ぐはっ…」

今コイツにゃあって言ったぞにゃあって。うわ、ちょにゃあってアリかよ。今にゃあは駄目だろ、心臓にも下半身にも悪いだろ。ああー…取り敢えずなんだ、浜野もやるじゃねえか。俺は遠くでニヤニヤしている浜野と速水に親指を立てて頷いた。
それから倉間に覆い被さるようにして、長イスに押し倒す。

「…南沢、さん?」

取り敢えずこの可愛い生き物は、美味しく頂くことにする。いい匂いのする首筋に顔を埋めると、俺のしようとしている事がわかったのか、倉間は抵抗し始めた。

「みな、っやだぁ…!」
「ちょっ倉間、バレるって…」
「………南沢」

それから俺の頭に三国の拳骨が落ちてくるまで、あと…





剿ウ意識はなんて卑怯な

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