「今日はここまでね。ノート書いて前に提出するように」 ああやっと4限目の授業が終わった。俺はばたんとノートを閉じて机に突っ込んで鞄から弁当を取ると、急いで教室から出て屋上に向かった。その途中でノート出し忘れた事を思い出したけど、俺には今さら教室に戻る勇気なんか無かった。 カタンと一人屋上に弁当を広げる。曇りなのもあってか、少し寒いけど仕方ない。だって教室にいたら南沢さんが来てしまう。それは俺に会いに来るんじゃなくて、俺のクラスの女子に会いに来る。一応俺と南沢さんは付き合っている…と思う。告ってきたのはあっちからで、俺も南沢さんが好きだから勿論オッケーした、けれど付き合ってからも南沢さんの浮気癖は酷かった。付き合う前から南沢さんの酷い噂は聞いていたけど、もうその噂以上だ。だって自分の恋人のクラスメートに手を出すくらいなんだから。 そういえば前に、南沢さんの言った言葉に腹をたてて大喧嘩になったことがあった。確か『ヤッてないから浮気にはならない』とかなんとか言われたんだっけ。あれには本気で驚いたから『所詮俺は性欲処理の為なんですね』って言い返したら本気で顔面殴られたの覚えている。それから『二度とそんなこと言うな!』と怒鳴られた事も。 「あんなに浮気されても別れないのはやっぱり好きだからか…」 好きという感情は本当面倒臭いものだな。 「倉間みっけ」 「!?」 体浮いたんじゃないかって思うくらいびっくりした。だって、なんで此処に南沢さんがいるんだ。南沢さんは当たり前のように俺の隣に座ると、当たり前のようにコンビニの袋からパンを取り出して、当たり前のように袋を開けて食べ始めた。そんなごく自然な流れでもくもくとパンを食べている南沢さんに言いたい事がありすぎて言葉が詰まってしまった。 「倉間なんで固まってんの?」 「えっいや、だって…アイツどうしたんすか?……彼女…」 「はぁ?誰の事だよ。彼女なんかいねーし、倉間と飯食べようと思って来たのにいないし」 彼女なんかいないって言ったかこの人。昨日まで一緒に飯食ってた奴はなんなんだ…と言いたいところだけどどうせまた『ヤッてないから彼女じゃない』とか言うんだろうな。ああもう俺この人の何なんだろう。 「ひとつ聞きますけど南沢さん、俺ってアンタの何なんですか?」 「はぁ?恋人だろ」「いや、そうなんすけどなんか俺…南沢さんの恋人っていうかその…なんか違うみたいだし…ていうか南沢さん彼女別にいるし、俺恋人の意味あんのかなーとか…わ、別れてもいいかなとか思ったり…」 本当は別れてもいいなんて思ってない。俺は南沢さんの気持ちが知りたいだけ。だけど、なんか南沢さんの顔が険しくなってる。あの日みたいにまた殴られたらどうしよう。 「ハッ…、あはは」 「?」 突然上から笑い声が降ってきた、勿論南沢さんの。でもなんで笑っているんだろう。南沢さんちょっと怖い。 「あーあ、まさか別れたいとかお前に言われるとは思わなかった」 「……」 「俺はちゃんと倉間だけが好きだよ」 …嘘つき。俺の呟いた言葉は南沢さんに届いていなかったのか、それに何も言わなかった。それからぐいっと強く肩を抱き寄せられて、南沢さんは口を俺の耳元に近づけた。 「なぁ倉間」 「…はい」 「今までの浮気とか…殴ったの以外な…」 俺の計算だった、て言ったらどうする? ------------------ 意味わからない方(多分皆さま)への説明 浮気とかして倉間を苛めて楽しんでいたのとかは全部南沢さんが考えてたことですって話です。殴ったの以外というのは、まさか倉間が自分を性欲処理って思っていたとは思わなかったからです。 面倒な設定申し訳ないです… ×
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