あーあ、テストなんてなんであるんだよ。
さっきもらった英語のテストをポケットから取り出した。まだ点数は見ていない。見るのが怖くてもらった瞬間に小さく折り畳んでポケットにつっこんだから。カシャンと屋上の柵に手をかけて、そこからグラウンドを見下ろした。サッカーしたいな、じゃない…テストから目を逸らしたら駄目だ。
がさがさと開けていくにつれ見えていく、空白に真っ赤なペンで書かれた×印。点数は…ああ、5点か。何があってたかなんて記号問題の適当に書いて当たったやつだけ。それだけで5点って色んな意味で凄いと思う。

「あーあ、テストなんかなかったらいいのに」

俺はそのテストで紙飛行機を作った。それをどうするかなんて決まってるだろ。名前はばっちり書いてあるけど、わざわざ拾って誰も見ないだろう。

「いけっ」

紙飛行機はひゅうっと風にのって大きく旋回しながら飛んでいった。その軌道をずっと目で追っていたけど、瞬きをした間に見失ってしまった。ばいばい5点のテスト、もう二度と会うことはないだろう。

そう、思ってた。



いつもと同じように三年生の廊下で南沢さんを待っていた。さようならの合図と同時にぞろぞろと生徒が出てくる。南沢さんもその生徒の流れにのって出てきた。寒いですねーなんて普通の会話をしながら校門を出た、その時だった。突然南沢さんが「あっ」と声を出して、なんですか?と聞いたら南沢さんはにやにやしながらポケットに手をつっこんで、何か白っぽいものを取り出した。

「これ、なんだと思う?」
「なにって……あ…」

南沢さんの手にある白っぽいもの、それは折り畳まれた紙だった。それも見覚えのある…テストの答案用紙。

「昼休みに上から紙飛行機落ちてきてなんか書いてたから見たら英語のテストでさぁ…コイツ5点の超馬鹿なんだぜ」
「…へぇーソイツ超馬鹿っすね」

南沢さん知ってて超嫌味だ。そのテストをヒラヒラと揺らして笑っている。

「でさぁ倉間…」
「はい」
「教えてやるから家来いよ」

きた。絶対くると思った。勉強するの嫌いだから見つからないように処理したつもりだったのに、まさか一番拾ってほしくない人に拾われてるなんて。

「あぁ、あと…」

がさがさと続いて出てきた白い紙飛行機たち。まさかそれらは昨日飛ばした理科と数学の0点テストでは…。

「理科と数学もな」
「えぇー!」
「お前に拒否権はないから」

その日俺は南沢さんに夜までみっちりと勉強を頭に叩き込まれた。










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