ああ一体俺はどうしてしまったんだろうか。最近アイツの背中を、顔を、目を見るだけで、酸欠になったみたいに苦しいんだ。目が合ったなら尚更、死んでしまうんじゃないかってくらい、呼吸を忘れたみたいな錯覚に陥る。なのに俺はどうかしてる。わざわざ(というか無意識に)俺の目は勝手にアイツの姿を見付けてしまうから困る。10秒もしないうちに見付けられるのは、アイツが変てこりんなマントあるいは髪型をしているからだろうか。いや、きっと違うな。例えアイツが、鬼道が、変てこりんなマントをしていようが髪型をしていようが、見付けられる自信がある。しかしその理由は俺には全くもってわからない。皆無なのだ。そのことを佐久間に言うと、不動も案外鈍いんだなだと。笑って言われたからすっげームカついたし、無視してやった。銀髪眼帯野郎に鈍いなんて言われたくねーよ。銀髪眼帯野郎の癖に。いや待て。あの眼帯に鈍いなんて言われたのは、俺を呼吸困難にする鬼道の所為だ。アイツがいちいち俺を呼吸困難なんかにしなかったら、俺だって佐久間に言わなかったし、鈍いなんて言われなかった筈だ。よし鬼道よくわかった、お前だ。全てお前が原因だ。


「鬼道ぉ!」


俺は鬼道の胸ぐらを掴んで、てめぇを見ると呼吸困難になると、なのに目は勝手にお前を探すと、それから佐久間に鈍いと言われたのはお前の所為だと、言いたいことを全部言ってやった。勿論恨みを込めて。なのにこの馬鹿といったら何故か笑ってやがる。ンだよ、なに笑ってんだよ。


「不動、お前鈍いな」

「てめぇも言うんじゃねーよ」

「本当にわからないのか?」


ついには哀れんだ目を向けてくる始末。なんで俺がこんな、可哀想な子みたいなことになるんだよ。お前の格好のほうが可哀想な子だよバーカ。


「お前俺に惚れているんだろう」
「………は?」


掴んでいた胸ぐらをぱっと放した。彫れて…掘れて…惚れて…?惚れているだと?俺が、鬼道を、好きだと?…確かにコイツと一緒にいるのは楽しい。楽しいというか、落ち着くっていうか、うん、なんかずっと一緒に居たいと思える。でもそれは佐久間とか、円堂とは違う気がする。アイツらといるのも楽しいけど、何か違う。……もしかしてこれが、好きってやつなのだろうか。


「否定しないのか?」


否定はしなかった。だけど俺は、熱で赤くなった顔を隠すように俯きながら、相手の顔に右ストレートを撃ち込んで走って逃げてやった。果たしてアイツはこれが、肯定か否定どっちの意味を持つと思うのか。ちよっと楽しみかもしれない。





title:晝



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