「ったく有り得ねえ…」

無人の廊下には俺の声は大きく響いた。その廊下を俺は壁に体重を預けて痛む腰を手で擦りながら保健室に向かっている。俺がこうなったのは南沢さんのせいだ。
部室でサッカーボールを飛ばされてから俺も負けじとサッカーボールを飛ばし返した。(もちろんグラウンドに出てから)そしたらそれが南沢さんの自慢の顔(笑)をスレスレにかすって、それがいけなかったのか南沢さんはボールを片手に本気で追いかけてきた。その時の悪魔のような黒い笑みの怖いことと足の速いこと速いこと…。
すると後ろから『ソニックショット!』とか必殺技の名前が聞こえてきて、死んだと思った瞬間俺の背中に当たって吹っ飛ばされた。だって音速て…逃げれるわけ無いだろ…。
芝生に打ち付けられた俺の体は至るところが擦り傷やらでぼろぼろで、背中なんか洒落にならないくらい痛い。

「一番弱くしてやったんだ…感謝しろよ?」

それからいつもの髪の毛サラッをしてにやりと笑った。きっと俺はあの時のにやりの顔は、一生忘れないだろう、それくらいムカついたから。

あれから頑張って自力でここまで来た。浜野達が助けてくれようとしたけど、何故かそれを俺のプライドが許さなくて助けを断ったのだ。

「もう南沢さんまじ死ね」
「あ?」
「っ!?南沢さ…」

俺以外の人の声が聞こえてきたから本当にびっくりした。振り返ってみると、後ろには眉間にシワを寄せて怒りオーラ全開の南沢さんが立っていた。俺もさっきのソニックショットの事を思い出して、南沢さんを睨み付ける。

「…なんでいるんスか」
「付き添いに来てやったんだよ。あの後神童に怒られてさぁ…」
「あっそーですか。別にいいんで行ってください」

くるりと振り返って壁を伝いながら、またゆっくりと歩く。南沢さんは呆れたようにハァと大きく溜め息を吐くと、俺の前に立って背を向けていきなり屈んだ。

「なにしてんすか、邪魔ですか?」
「ちげぇよ馬鹿か」
「じゃあ何なんですか」
「乗れっつってんの」
「…は」

乗れって、おんぶしてやるからってこと?あの南沢さんがおんぶ?それじゃあ御言葉に甘えて…なんてそんな言えるわけないだろ。南沢さんにおぶられるなんて恥ずかしすぎるし。いつまでも戸惑っている俺に南沢さんはこっちに首を回して「早く乗れ」と言った。







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