昨日は最悪なもん見ちゃったなーなんて。南沢さんと彼女さんが一緒に歩いているところ。しかもその彼女が俺に似てるとか意味わかんないこと言われた。背ちっちゃいからそう言ってるだけだろ、嫌味だろそうだろ。
ばさりと学ランをロッカーに突っ込んで、ユニフォームに腕をとおした瞬間、自動ドアが開いて南沢さんが入ってきた。

「ちわ」
「おー」

ガタンと隣のロッカーを開けてそこからきちんとハンガーにかかった10番のユニフォームを出した。それからばさばさと服を脱ぎ出したから、慌てて目を逸らした。

「あーっ南沢さん」
「!?なに…」

突然浜野が南沢さんを指差して声をあげた。その声は少なくとも俺と南沢さんと速水が飛び上がるくらいの大きさだった。

「見ましたよー昨日彼女さんと一緒に帰ってたでしょーっ」
「っ!」
「ちょ、浜野…」

あんな大声を出して何を言うかと思えばまたそんなプライベートな事を…。ていうか今そんなこと言わなくてもいいんじゃねーの?

「見たんですよー。な!速水、倉間」
「えぇ…?こ、こっちにふらないでくださいよ…」
「え!あっ、うん…」
驚いた。突然こっちに振るなよな。南沢さんもなんか苦笑いで見てきた。

「…見てたのかよ」
「す、すみません…」
「別にいいって」

速水はおろおろしながら一応南沢さんに謝った。謝るべきはお前じゃない気がするんだけど。さて、なんか南沢さんの彼女の話になってきたところで俺は失礼するか。

「あっそうそう、彼女さん倉間に似てますねー」
「ぶっ!」
「おいっ!」

どうやら失礼するわけにもいかないみたいだ。浜野の野郎まだ言ってやがったのか…。すると速水も隣で「ですよね」とか便乗し始めた。

「似てねぇっつってんのに!」
「似てるよー、髪の毛ショートのところとかツリ目とのところとか、なっ速水」
「小さいところもですよー」
「似てないっすよね、南沢さん」

見上げた南沢さんの目が一瞬泳いだように見えた。

「ハッ、似てねぇよ」
「ですよねー!」
「えー似てますよー」

浜野と速水がぶーぶーと抗議をする。南沢さんは髪の毛をさらっと流すと目を細めた。

「俺の彼女のが可愛いし、第一こんなチビじゃない」
「なっ、チビって言うな!」
「まあまあ倉間落ち着いて…」
「じゃあな」

ひらひらと手を振って南沢さんは行ってしまった。「自分だってチビの癖に」と小さい声で背中に向かって悪態を吐いたら、部室の中なのにものすごい速さでサッカーボールが飛んできた。ごめんごめんと謝る南沢さんの顔からは悪意しか感じられなかった。







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