「知ってる?南沢先輩、また新しい彼女できたんだって」
「知ってる知ってるー。田中先輩だよねー」

隣の女子の会話の内容が気になって、帰る準備をしているフリをして聞いていた。
また新しい彼女という事は、前に俺が見たあの人は捨てられたのだろうか。俺が南沢さんを避ける原因を作った人。
別に南沢さんが嫌いなんじゃない、けどなんかあの日から一緒にいるのが嫌で気持ち悪くて苛々するようになった。嫌悪ではない、何か気持ち悪いもやもやしたやつ。

「倉間ー」
「ちょっと待て」

鞄の中にペンケースだけを突っ込んで、鞄を肩に掛けた。教室には、俺と隣の女子しかいない。多分女子の会話を聞いていたら遅くなったんだろう。浜野と速水はわざわざ呼びに来てくれた。

「倉間遅いですよー」
「あぁ、ちょっと」
「ま、いーや。帰りにコンビニ寄ろーぜ、腹減った」

その浜野の意見に賛成して、近くのコンビニに寄った。よっしゃ、ピザまん残ってる。

まだ一概に暑いとはいえないが、もうそろそろ衣替えかな。学校にもカッターシャツのみの奴とかもちらほらでてきたし。
ちょうど俺がピザまんの最後の一口を食べた時だった。隣の浜野があっと人差し指を指して「南沢さん彼女」と言ったのは。俺と速水も意味がわからないまま、その指の指す方向を見て、どきりとした。
南沢さんが彼女を連れて前から来ていたのだ。多分こっちにはまだ気付いていないだろう。
ああまたなんか苛々してる。

「うわわ…まずいですよ。このまま行くとすれ違っちゃいますよ」
「んーまぁいいんじゃね?」
「よくないですよー…」

南沢さんの隣の女子は、やっぱり俺が見たあの人とは違っていた。ショートで少しキツめの雰囲気なのは、前の人と似ているけど。そういえば、南沢さんの隣に歩く人で髪の長い人はいなかった気がする。クラスの女子も「南沢さんはショートが好きだから」とか言って長かったのをバッサリ切っていた。普通そこまでするもんなのか、とあの時はびっくりしたものだ。
南沢さんって本当にショートが好きだったのか。

「あ、曲がった」

その言葉にはっと我に返った。
どうやら南沢さん達は道を曲がったようだ。ほら大丈夫って言ったろ?と浜野が偉そうに鼻を鳴らした。

「ちゅーかあの人倉間に似てたくね?」
「言われてみれば…そうですね」
「似てねぇよ!」

そしてもう一度心の中で似てねぇよ、と繰り返した。







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