「せっかく雪なんだし皆で外で遊ぼうぜ!」
その声が教室に響き渡ったのは昼休みのこと。雪が降って一番大喜びしているのは多分円堂だろう。吹雪は北海道からの転校生だから、雪を見て少し懐かしそうにしていた。
「おい鬼道!吹雪!遊ぼうぜ!」
「あ、あぁ」
「うん!」
それから円堂は廊下を歩いている奴や、トランプをしている奴やらに声をかけて、集まったのは大変な人数になった。大体は知っている奴だが、中には全く面識の無いやつもいる。
その群衆でグラウンドのど真ん中で一度輪になった。何をして遊ぶのか、という事を決めるのかと思ったら、どうやらそれはもう決まっているみたいで、円堂は持っていた空き缶を輪の中心にさくりとおいた。
「缶蹴りしようぜ!」
「え…?」
(雪全く関係ないだろ)
多分今、皆が同時に心の中でツッコんだと思う。誰一人声に出して言わなかったのは、皆の優しさなんだろう。
「鬼はヒロトだ!皆隠れるぞー!」
勝手に鬼に決められたヒロトは頭にハテナを浮かべながら、取り敢えず顔を伏せて数字を数え始めた。円堂が走っていったのに続いて、皆も散々に隠れ出す。俺も放っていかれないように慌てて体育倉庫の裏に隠れた。
「ん?」
まだ誰か隠れていない奴がいる。ヒロトはまだ数えているけど、早く隠れないと見つかるのは目に見えている。俺はそっと影から出て、ヒロトを警戒しながらそいつの腕を掴んだ。
「ぅわ!?」
「不動か…って早く、こっちに隠れろ」
ぐいぐいと不動の腕を引っ張って俺達は倉庫の影に隠れた。壁から少しだけ顔を出して様子を見てみると、丁度ヒロトが立ち上がって探し始めたところだった。危なかった…
「あ、サンキュな」
「あぁ…それにしても何であんな所うろついていたんだ」
「俺来たばっかだし、隠れる場所とか知んねーもん」
「それもそうか…」
「……」
「……」
それから不動も俺も黙りこんで、何やら気まずい沈黙が流れた。