結局遅刻はまぬがれた。しかし教師は俺が教室についてから約一分後に来たという、まさにギリギリセーフってやつだ。汗をかいて走ってきた俺に吹雪は目を丸くして「鬼道君がギリギリなんて珍しいね」と言った。

「一限目数学だっけ?」
「いや、社会だ」

俺の前の席の豪炎寺とその隣の不動は、もうすっかり打ち解けたみたいだった。よく二人でいるところも見かける。まあ昔は人見知りだったから、仲のいい友達が出来てよかったと思う。

「起立ー」

その声と共にガラリと戸が開いて社会担当の教師が入ってきた。それから机の中をあさってノートを取り出すが、教科書が見当たらない。しまった、家に置いてきてしまった…








キーンコーンとチャイムが鳴り響いて、授業の終わりを知らせた。

「あの鬼道君が遅刻しかけるわ教科書忘れるわなんて、雪でも降るんじゃないかな」
「…うっかりしてただけだ」
「やっぱり今日雪降るよ」
「……」

窓の外を見ると、空は重たい雲で覆われていた。今日はいつもより寒いし、もしかしたら雪が降るかもしれない。

「じゃあ僕ちょっと教科書借りてくるから」と行ってしまった吹雪の背中を目で追って、ふと机の中を漁る。しまった、また教科書が無い…。時計を見るとあともう休憩時間は1分ちょっとしかなくて、俺も慌てて隣のクラスに借りに行った。



***



『……でχが4だから…』

ああ眠い、数学ってどうしてこうも眠くなるんだ。教師にバレないように欠伸をして、目に溜まった涙を拭った。その時だった。

「雪だー!」

びくっと体が跳び跳ねた。多分それは俺だけじゃないだろう、皆はその声のした方と窓を一斉に見た。窓の外は、円堂が言った通り雪がちらちらと降っていて、教室が一斉に騒がしくなった。

「ね、言ったでしょ」

隣から吹雪の自慢気な声が聞こえてきた。それに俺は言葉が上手く返せなくてじっと黙る。それから彼は頬杖をついて窓を見ながら「積もるよ、絶対」とも言った。

その後も雪は降り続けて、とうとう吹雪の言った通り地面はすっかり白で覆われてしまった。






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