うまく育てると愛に進化するらしい
今日は仕事が早く終わり、これはラッキーだといつも以上に速いスピードでバイクを駆った。
掠める風が痛い。が、そんなこと気にしている余裕はない。
早く、早くなまえに会いたい。こうしている間にも気持ちは膨らんで苦しくなるばかり。
俺、本当にどうかしてる。
いなくなれば気力を失い、いれば毎日が楽しくなる。
自分のリズムが完全になまえによって左右されている。凄い大変なことなのだが、別に嫌ではない。
無事予定していた時間に到着し、バイクを停めて足早に店の中へと入る。今日は仲間達の貸し切りだったはずだ。
中に入ると、共に星を救った仲間達がワイワイ騒いでいた。早速バレットが酒を呷って、俺の名を呼んで誘ってくる。いや、今はまだ飲みたくないんだが。
「あ、クラウドさん!」
店の奥から姿を現したのは、今俺が一番会いたかった人。見る度に愛おしくて、苦しくなる。
彼女はパタパタと近づいてくると俺の前に立ち、にこっと笑う。
あぁ、何だか色々限界だ……。
「お疲れ様です!」
「あぁ、ありがとう…」
「今すぐグラス用意しますから、えーっと、そうだなぁ……」
なまえがきょろきょろと辺りを見回して、それから騒がしいところから少し距離を置いたちょうどよい場所を指差した。あそこに座れ、という事らしい。
「……よく、分かってるな」
「え?」
「いや、こっちの話だ」
俺があまり騒がしいとこに近づかないこと、言ったこと無かったのに。性格上あまり騒げないから、自然と距離を置いていたのだが。
ユフィやシドが不平を言うが無視し、言われた通りの場所に座った。程よい距離で、性にあった場所だ。
しばらくしてなまえがグラスを持ってきてくれ、お酒を注いでくれた。
それを飲もうとして、しかしグラスをテーブルに戻す。
なまえが首を傾げているのが見えた。なんだ、すごく可愛く見える。俺本当に大丈夫か?
「飲まないんですか?」
「飲む前に、する事がある」
我慢していたが、もう駄目だ。帰り道に考えながら思った。きっと、俺はどうしようもないくらいなまえが愛おしい。
好きな人がどうとか、もうそんなことどうでもよかった。いて、断られたらすっぱり諦めればいい。
とりあえず、伝えたい。
立ち上がって、なまえの腕を掴んで店の外へと連れ出す。仲間達がざわつくのもお構いなしに。
「あ、あのっ……」
戸惑うなまえの声にすら、胸が高鳴った。普通なら考えられない。俺はどうやら本当にイかれたみたいだ。
だって、今だってこんなにも愛おしくて愛おしくて……。
「く、クラウド…さん?」
「あっ……」
気づいたら腕の中になまえの姿がある。ああ、一瞬理性飛んだな。
でも、離したくない。離したら、もう二度と俺のところに来てくれないようなそんな気がしたから。
「……なまえ」
「は、はい…」
「今、いやずっと前から、あんたが欲しかった……」
初めて会ったあの日から今この瞬間まで。一瞬たりともそう思わなかった日はなかった。
生活に支障を来すくらい、欲しかった。ずっとずっと、欲しかった。
「……もう、離したくないんだ…。ずっと、一緒にいてほしい…」
言葉が浮かんでこない。幼稚な告白だと、笑われてしまいそうだ。
だが、腕の中にいるなまえはただ俺を見上げ、笑みを浮かべながら小さく頷いた。
その行動の意味が分かった瞬間、俺の理性は破壊された。枷はどっかに吹っ飛んで、俺を動かすのはなまえへの気持ちだけ。
少し乱暴になった口づけは、2人の愛の誓い。
その味はほんのりと、甘い。
うまく育てると愛に進化するらしい
(こんなに愛しく思うとはな…)
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