勝手に大きくなるのを止められないらしい
…なぜだか、今日は無性に動きたくない。活力という活力が、皆無。
「…クラウド、目が死んでる」
「ほんと。どうかしたの?」
デンゼルとマリンが覗き見てくる。目が死んでるって、それ本当か?
まあ、死んでいても仕方ない状況なのだが。
「…はぁ」
「マリンもデンゼルも、どうしたの? クラウドは今仕事…」
ため息をついたと同時にティファが店の奥から顔を出した。チラッと見るが、声をかける気力すら失いかけている。
「ティファ、クラウドの目が死んでる」
「…本当ね」
「クラウドったら最近ずっと“世界の終わり”みたいな顔してるの」
「確かにそうね」
デンゼル、二回も目が死んでるなんて言うな。事実だけど。そしてマリンも、世界の終わりみたいな顔なんて……してるか。
反論出来ないくらい子供たちの言葉が正当で、もうお手上げだ。
「クラウド、仕方ないじゃない。なまえはしばらく帰郷するって言ってたんだし」
「…何でそこでなまえが出てくるんだ」
「どうせなまえがいないから活力皆無なんでしょ?」
…何で当たるんだ。
今から一週間前。なまえの母親が急に体調を崩したらしい。一人娘であったなまえは看病の為に急いで故郷に帰った。それはティファからその日のうちに聞いていた。
なまえを見れない。遅くまで仕事をしているなまえに会うために心なしか早めに配達を終えるようにして、帰りにチラッと会っていたのに。
休みの日は見ることが出来ないが、1日2日の話だったから我慢もできた。
なのに、もう一週間も会っていない。
――――何でなまえに会わないだけでこんなに気持ちが沈むんだ?
――――何で会えないだけで、こんなにも苦しく、辛いんだ?
問う度に答えは必ず目の前にあって、嫌でもそれしかないんだと問う度思い知らされる。
“なまえが、好きだからだ”
答えはいつも、そう言う。
会えない日が続くほどに答えは、しつこくしつこく言ってくる。
“好きだから、会えないのが辛い”
“好きだから、会えないとモヤモヤして活力が生まれない”
“好きだから、会えないせいで毎日がつまらない”
うるさい、とはねのければどれだけ幸せか。違う、と言えればどんなに楽か。
でも言えない。はねのけれない。
何故なら全部、本当だから。
会えない日が続けば続くほどに想いは募り、想えば想うほどに辛くなる。そうして知らない間に毎日が霞むんだ。
勝手に大きくなるのを止められないらしい
(いつからこんなにあんたを想うようになったかな)
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