05
「…?」
先頭を歩いていたレイヴェルは、角を曲がった瞬間首を傾げた。そこにはアンリの言う人影など、どこにもいなかったのだ。ラシアとナナミは安心したように胸を撫で下ろす。
「な、なんだよ誰もいねーじゃねーか…」
「ほっ…よかったぁ〜」
「アンリ、本当に誰かいたのですか?」
「あ、はい。いたはずですが…あっ!!」
突然、アンリが何かに気付いた様子でしゃがみ込み、レイヴェルは不思議そうに覗き込む。するとアンリは立ち上がり、拾ったものを差し出した。
「見てください、焼きプリンです!!!」
「って焼きプリンですか」
「よかった…お化けに取られたかと思った」
「へー美味そうだなそれ。今度店教えてくれよ」
軽くずっこけたレイヴェルに構わず、アンリとギンは和気あいあいと話し出す。すると、ユリが口元に指を当てて考え出した。
「…それ誰が落としたんだろう……」
「それ持ってたのって、アンリと買い物してた奴だろ」
「……まさか…!!」
ラシアの言葉にアンリはハッとして、真っ暗闇の廊下を見つめる。するとすぐに走り出してしまった。
「えっ、おい!!どうした!?」
「まだ近くにいるはず…私追いかけるね!!」
「だ、ダメだよアンリ!!一人は危ないよ〜!!」
ナナミや皆の声に構わず、アンリは暗闇の廊下を駆け抜け、次第に見えなくなってしまった。全員焦り出し、アンリを追いかけようとした、その時ーーー
「キャァァァァ!?お、お化けー!!(バチーン)」
「Σぐはっ!!?わ、私は………」
アンリの他に人がいるのか、小さく会話が聞こえ、人影も二人見える。急いで駆け寄ると…
「「「セフィロス!!?」」」
なんと、何故か右頬を赤く腫らしたセフィロスがアンリを片手で拘束していたのだ。しかも地デジカ姿で
「ふっ、ようやく来たか貴様ら」
「えっと、何でこんなところにセフィロスが?しかも地デジカって…」
「まぁまぁ、よかったじゃねぇか。ラシアの同類に会えて」
「あっはははは!!!ラシアの同類とかウケる!!」
「よかったですね、仲間が出来て」
「何がだよ、こんな変態と俺を一緒にすんじゃねー!!!」
誰も話を聞いていない上、ユリにドン引きされてしまったセフィロスは、少し泣きそうになった。しかし、それでは登場した意味がないので声を荒げる
「いい加減にしろ貴様らーー!!ここは"セフィロスその子を離せ"とか言うところだろうが!!見ろこの娘の怯えた顔を!!」
「ちょっと!!焼きプリン返して下さい!!それすっごく苦労して買ったものですよ!!?欲しかったら自分で並んで買ってください!!」
「全然怯えてるように見えませんが。というか、焼きプリンのことしか頭に無いんですかアンリ」
レイヴェルのツッコミが聞こえていないのか、アンリは焼きプリンを奪い返そうと必死だ。するとナナミは呆れたようにため息を吐いた
「仕方ないなぁ…じゃここはナナが
…セフィロス!!!アンリを離しなさい!!!この私が月に代わってお仕置きよ!!!」
「セーラー●ーン!!?」
「ふはははは!!!返してほしくば大広間に来るがいい!!!さらば!!!」
「しかも乗るの!?わっ、ちょ…きゃー!!!」
ナナミとセフィロスのコントにツッコミを入れていると、アンリはそのままセフィロスに連れ去られてしまった。
「アンリ!!あぁもう!!連れてかれた!!」
「野郎焼きプリンだけじゃなくアンリを誘拐しやがって……地デジカのくせに調子乗ってんな」
「変態セフィロスと一緒ではアンリが心配です。追いかけましょう」
「うん、行こうみんな!!!…えへへ、なんかこの展開って熱い物語の登場人物みたいだねぇ♪」
「楽しんでる場合かよ、お前がアホなことやってる間に、アンリが連れてかれちまったってのに」
ガッツポーズで力説するナナミにラシアは呆れたように腕を組んだ。その時ーーー
「…アンリ?今、アンリと言ったか?」
「!?誰……ってえぇっ!!?」
ユリは咄嗟に声のする方に武器を向ける…が、そこにいたのは
「「クラウド!!?」」
なんと、いつもの戦闘服ではなく、ラフな格好をしたクラウドがいたのだった
by美鈴
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