04
色々とあったがようやく全員揃い、6人は再び歩き出す。こんな気味の悪いところ、さっさとおさらばしなければ。
「んー……」
「どうしたの?」
もう片方の手をナナと繋ぎながら歩くユリが、先程から唸っているアンリに問いかけた。
とても悩んでいるその様子にナナまでもが視線を向ける。
「あのね、ここに来る前……一緒に買い物してた人がいたんだけど……こっちに来てるのかな?」
アンリの問いにユリは少し前を思い返す。出口を探しに行った人達の話と自分が見たものを短時間で思い出していく。
「私達の他に人はいなかったと思うけど……。どうかしたの?」
「えっと、その人に持たせてた焼きプリンが無事かどうか心配で……」
「焼きプリン?」
「うん。限定100個の絶品焼きプリン。買わない手はないって言って朝早くから並んで買ったんだけど……こっちにもし来てたらお化けに焼きプリン奪われてるかもしれないから……」
とても不安げなアンリに、聞いたユリはおろかナナまでもが拍子抜けする。あまりに神妙な面持ちで悩んでいたので聞いてみたのだが、とんだ肩透かしを食らってしまった。
焼きプリンの無事を心配するアンリから視線を外し、ユリとナナは再び前を見る。
と、何の偶然か前を歩く3人の会話も途切れ、しばらく沈黙の時間が続く。
沈黙が続く。
続く。
続く。
「誰か喋れって!!」
6人の間に流れた沈黙を破ったのは不完全体地デジカことラシアだった。
「何ですかラシア。静かなことに越したことはないじゃないですか」
「そ、そうだけどよ。せ、せっかくみんなで探検してるのに無言なんて、楽しくねえだろ?」
引きつった笑顔を浮かべながら妙に声を震わせるラシアと、至って冷静に意見するレイヴェル。その組み合わせの横で珍しく無口を貫いていたギンが「あ」と唐突に口を開く。かと思えば、ニヤニヤ笑ってラシアを見た。
何かする気だ。後ろを歩いていたアンリ達は即座に察した。
しかし、その前にアンリは目を見開く。
「あれ……誰、かな……」
「え?」
「今、人が……」
一同顔を見合わせ、小さく頷いた。
――正確には2名を除く残り4名、だが。
「まさか……行くの?」
「やめようぜ、な? な?」
人の正体を探りに行くであろうと予測した怖がり組は必死だ。
しかし、もしかするとナナとラシアに着ぐるみを着せた人物の可能性もある。犯人を早々に捕まえなくてはまた何か仕掛けをするかもしれない。
または、アンリの買い物につき合っていたプリンを持っている人という可能性もある。
どちらにせよ、確認する以外に手はない。それが4人の間で一瞬のうちに出された答えだった。
そんなわけで2人の健闘も虚しく、一同はアンリの言う人が人影を追って先に進むことになった。
先にある突き当たり。アンリが言うには、人影は左の方へ歩いていったらしい。
怖がり組のナナ、ラシアをそれぞれユリとギンが無理やり引きずり、6人は何の躊躇いもなく突き当たりを左に曲がった。
by 玲夜
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