10
「ん? あれ……?」
目を覚ますと、お馴染みのテントにいた。他の4人もいる。が、あの2人はいなかった。
一番に起きたユリは目の前に広がる光景に唖然とする。なんだこれは、どういう事だ。
「んー?」
「あれ、俺……」
「ふぁ〜よく寝たな〜」
「……どうして、ここに…」
続々と起き出した皆はきょろきょろ辺りを見回す。
「あれ? アンリとクラウドは?」
「まず、私ら屋敷にいなかったか?」
「いつ移動したんだろうね…」
「2人がいない、かつこのテントに戻ってきているということは……」
「おぉー! 着ぐるみ脱げてるぜ!」
『……』
ラシアが話なんてなんのそのといったように叫び、他4人はどこか冷めた目で彼を見つめる。
も、それが長続きすることはなく、レイヴェルがごほんと咳払いをしたことで終了した。
「寝ていたことも考慮すると、全てが全て夢だった……ということかもしれません」
「えー、でもナナ、ちゃんとアンリとクラウドと話したこと覚えてるよ?」
「私だって、イカまみれになったの覚えてるぜ?」
おかしな話だった。あとから皆で話を出していくと、皆が見ていた夢がしっかり繋がるのだ。
アンリとクラウドのことも、ラシアの地デジカ事件もギンのイカまみれ騒動も、レイヴェルのぶちギレすら皆覚えていた。
「すごいね、みんな同じ夢を見るなんて」
「絆の力ってやつかな〜?」
「だったらすげぇな!」
盛り上がるナナミやギンを見ながら、レイヴェルは呟いた。
「本当に、夢みたいな話ですね…」
一方、その頃。
「――い、おい、アンリ!」
「ふぁっ!?」
声が聞こえて目を覚ませば、アンリの目に飛び込んできたのはあの洋館ではなく、日常。
ガタン、ガタン、と揺れるのは間違いなく電車だ。
「あれ……私、洋館に……あれ?」
「あんたも、その夢を見たのか」
「えっ、じゃあクラウドさんも?」
そう問えば、隣に座るクラウドはうん、と頷く。
「何だか、夢じゃないみたいな、夢でしたね」
「そうだな……」
「でも、楽しかった」
言葉に出すと蘇るリアルな夢の、愉快な仲間達。彼らとの短い時間を思い浮かべて、自然と零れた笑み。
そんなアンリの笑みを見たクラウドもまた、僅かに口角を上げ、微笑んだ。
――と。
「――次は、終点海浜公園前、海浜公園前です」
「あれ? 終点?」
「……しまった…」
さっきまで微笑んでいたはずのクラウドは一気に絶望の表情を浮かべる。
アンリにもその理由がすぐに分かった。この状況、非常によろしくない。
「……乗り過ごした、か…」
スピードをゆるめ始めた電車の窓から見えたのは、家からだと遠くに見えるはずの海。
海浜公園前という標識が2人の視界を掠めたのは、それから数秒後の話であった。
Fin.
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