09
「さて、帰りますか」
白目向いてひっくり返っているセフィロスをバックに、ナイフをしまって清々しい顔で笑うレイヴェル。クラウドはアンリに歩み寄って微笑んだ。
「大丈夫か、アンリ」
「はい。クラウドさんも無事でよかったです」
「…あのさ〜」
ナナミは顎に人差し指を当てて、首を傾げる。
「みんな普通にしてたから聞かなかったけどさ、このクラウドはナナ達が知ってるチョコボクラウドじゃないのかなぁ?」
「おいチョコボってなんだ」
クラウドが睨み付けてくるが、ナナミは全く気にしていない様子で見ないふりをした。その疑問にユリは口を開く
「違うんじゃない?私達きっと違う世界から来たんだよ。」
「あり得るのか?そんなおとぎ話みたいなこと」
「私も…ユリの言うとおりだと思うよ」
ラシアが片眉上げてユリに聞くと、アンリはラシアを見上げて言った。
「だってみんな、私を知らなかったのにクラウドさんは知ってたんでしょ?」
「…まぁ、そうだな。」
「私らが知ってるチョコボクラウドでもないみたいだしな、お前。チョコボクラウド違いってやつだな」
「誰がチョコボだ。」
チョコボ言われるクラウドの横で考え込んでいたレイヴェルが顔を上げる。
「…パラレルワールドという言葉を聞いたことがあります。今自分がいる世界とは全くの別世界、関係がないようである世界、でも同じだけの時間が流れていて存在している……」
「それこそおとぎ話じゃないのか?」
クラウドはレイヴェルに聞いてみるが、首を振った
「いえ、僕達の世界でそれが起こっていました。あり得ない話じゃない」
「えっ、そうなの!?」
「うん、ナナ達元々いた世界が違うんだ〜。それを神様達が集めたって感じ」
「そうだったんだ…不思議…」
アンリは一瞬面食らった様子でいたが、すぐ興味津々って感じでナナミを見た
「ねぇ、どんな世界なの?」
「クラウドとか美形揃いで癒しがたっくさん!!でも戦ってばっかでやんなっちゃう」
「お前は逃げてばっかじゃねーか」
「だって怖いんだもん〜。ラシアやギンみたいな喧嘩マニアと、かよわい乙女のナナを一緒にしないでよぅ。」
「大丈夫だ。私みたいに毎日牛乳飲めばナナも喧嘩好きになれるぜ!!」
「そんな理屈聞いたことないんだけど」
「ナナまで喧嘩好きになったら手に負えませんね」
「…っあははっ……!!」
みんなのやり取りを見ていたアンリはお腹を抱えて笑いを堪えていた。クラウドも微かに笑っている。そんな二人を見てラシアは首を傾げた
「ご、ごめん…でもなんかおかしくって…!!みんな楽しそうだね」
「へへっ、だろ?アンリも来るか?」
ギンがニッと笑ってアンリを見ると、アンリはゆっくりと首を振った。
「私は…私の世界が一番いい。だから、みんなのところにるよ」
「そうだな、セシル達が心配して……あ、そうだ」
クラウドは思い出したようにポケットから焼きプリンを取り出した
「アンリ、渡しそびれたが焼きプリンだ」
「…あれ?何でクラウドさん焼きプリン持ってるんですか?一つしか買ってないはず……」
「何でって…俺がずっと持ってたからだが」
「だって落としたんじゃ…ほらこれ」
アンリは先程廊下で拾った焼きプリンを差し出す。クラウドの持ってる焼きプリンと全く同じ。ラシアは若干顔をひきつらせた
「ちょっと待て。一つしか買ってないんだろ?なのに…同じやつが二つって…」
「えっ…と……じゃ、じゃあの時私が見た人影って………」
アンリは焼きプリンを拾う前に見た人影を思い出す。てっきりクラウドだと思っていたあの人影は……
「…そういえばアンリがさらわれた時、クラウドは後ろから来ましたね。アンリの焼きプリンを落としたのがクラウドなら前から来るはず……ということは」
「……お化け?」
ナナミの言葉が発せられた瞬間、サーっと冷たい風が吹いた気がした。さっきまでののほほんとした空気は一変してしまった。……その時
バタバタッ
全員その場に倒れてしまったのだった。
by美鈴
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