バレンタインデーにあげたチョコは、思わぬ奇跡を私に返してくれました。
メテオ災害、星痕症候群流行。様々なことがあったものの、全てが終息し、穏やかな生活が帰ってきた。
エッジでは珍しい花を売り始めてまだ日は浅い。が、街の人は自然の持つ癒し効果を求めてよく足を運んでくれた。
そんな中、彼はやってきた。
それは今から一年ほど前の話。
「あ、いらっしゃいませ」
過去を思い返していると、まさにその彼が店内に足を踏み入れる。
金髪のツンツン頭に憂いを帯びた瞳と、整った顔立ち。色白で、しかししっかりとした体つき。
そんな彼の名は、クラウドという。
「…この前言いそびれたんだが。チョコ、ありがとう……な」
「えっ? あ、ああ、い、いえ!」
開口一番からお礼を言われ、一瞬理解が追いつかなかった。が、すぐに理解し私の体温は急上昇する。そういえば、と今から1ヶ月前を思い出した。
告白だなんだと考える前にとりあえずあげてみよう。そんなノリでチョコを作り、そんなノリであげた。何事も段階を踏むことが大事なんだよ、うん。
「すまないな。しばらく来られなくてなかなか礼が言えなかった」
「そんな、大丈夫ですよ。こうして来てくれただけでも嬉しいですから」
言いながら花を弄る。少し遠くの地域から仕入れたその花は、香りがよいと多くの客に人気だった。確かに弄っていても、ふわりと香る匂いはくどくなく、程良く甘い香り。人気なわけだ。
匂いを楽しみながらしばらく弄っていると、ふとクラウドがずっとその場にいることに気がついた。
「あの……まだ、用事でも?」
「あ、いや……」
「……あ、まさか、お探しのものが…?」
弄るのをやめ、立ち上がる。先ほどから目を逸らしっぱなしの彼に疑問を抱きながらも、私は返事を待った。
と、彼の碧眼が私を捉える。
次の瞬間、手を引かれ力に抗う暇もないままクラウドの腕の中へと吸い込まれた。
何が、どうなっているの?
心臓は大暴れし、思考は全くまとまらない。
「バレンタインからずっと我慢してきたんだが……限界だった」
「えっ……?」
「好きだ……アンリ」
バレンタインデーにあげたチョコが告白のきっかけになったという事実を聞いたのは、それから少し先の、未来の話。
プラム・サムシング(それは有り得ないくらい素晴らしい事)
title→誰花様
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