valentine project | ナノ







 類は友を呼ぶ、らしい。
 似た者は寄る、らしい。
 ならばこの恋もまた、必然なのだろうか。


 作ったチョコを鞄に入れたまま向かった先は図書室だった。夕方の図書室は人気もない。今の自分にはもってこいの場所だった。
 周りの友達たちは今頃好きな人にチョコを渡しているのだろう。その光景が、容易に想像出来る。
 私も、その1人になるはずだったのに。
 昨日の夜、ようやっと決意してチョコを作った。馬鹿馬鹿しいと思っていたバレンタインデーというイベントに、柄にもなく便乗してみた。
 それで想いが伝えられるなら、と。
 なのに、このざまだ。


「笑えるな、本当……」


 本棚に背中を預け、ため息をつく。持っているスクールバックが、いつもより重く感じた。
 決意した。にもかかわらず呼び出せなかった。元から話すのは得意じゃないが、それも承知の上だった。
 なのに、なのに。
 やっぱり自分には無理なのだろうか。柄にもないことなのだろうか。
 ああ、嫌だ。
 もやもや、もやもや。


「こんなところで、何をしているんだ?」
「っ?!」


 ふいにかけられた声に、思わずびくりとした。
 横を向けば、いたのは呼び出せなかった男子。


「……スコールか」


 脱いだコート片手に立つ、同じクラスの秀才は名前を呼ばれるなり目を逸らした。
 チャンス、なのだろうか。
 人気もない図書室。2人きりの、図書室。
 今なのだろうか。


「アンタも、本を?」
「……いや、私は別に」
「そうか」


 お互いお喋りな方ではない。会話が終わるのは神も認めるような必然。
 私の横を抜け、近くの本棚を見つめるスコールをチラッと見る。
 今しか、ないのか。
 今しか。


「……スコール」
「?」


 本棚から私に向けられた双眸に、心臓は敏感に反応する。
 あと、少し。
 柄にないとしても、私は伝えたい。
 鞄に突っ込んだ手が、小さな紙袋に触れる。


 さあ。いざ、勝負。



開戦日、14
(終戦は望まない、砂糖塗れの戦い)



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