始動、数日前。
「本当にそう言ったの? ライナ」
「ああ、昨日確かにそう言った」
「何だか、意外だよな」
隣でザックスが言う。それに小さく頷いた。俺だって意外だと思ったんだ。
大好きとは言わなかった。だが、結構好きなんだとは言った。ならきっとユフィやザックスが求めている情報になるだろうと思い、報告したのだが……。
「クラウド?」
「ん?」
「ん?じゃないでしょ。話、聞いてたの?」
「……いや」
正直に白状するとティファが腰に手を当て大々的にため息をつく。
「ザックスとエアリス、ユフィの3人で例の、考えてくれるって」
「そうか」
「決まり次第、連絡するみたいだからそれまで待機ってところかな」
言って、ティファは少し離れた場所で話し合っているザックス達のところへ向かっていった。
正直自信がない。自分にこういう役回りは全く向いていないと思う。いや、向いていないんだ。
だが、ライナの為ならば腹をくくるしかない。そう思えばきっと俺にも出来るはずだ。
《こういうの、好きなのか?》
《うん、結構好きなんだよね》
覚悟を決めよう。全てはライナの為だ。
ふと思い立ち、携帯を開く。17時55分。まずい、もうそろそろライナの仕事が終わる時間だ。
「……みんな、悪いが先に帰る」
「おう、了解」
「気づかれないようにね」
「頑張って、クラウド」
「バレたらクラウドの奢りでケーキバイキングだからね〜」
みんなに念を押されながら、家を出る。バレたらケーキバイキング、財布には痛い話だ。何としても隠し通さないと。
気づかれないように。表情に出る心配はないと思う。あまり変わらないと仲間内では有名だ。
あとは、態度や行動か。雰囲気もか。
注意を払うべき場所を探しながら、もう一度携帯を開く。18時。終わったか。
慣れた手つきで番号を表示、通話ボタンを押す。呼び出し音が数回鳴った後に、聞き慣れたあの声が耳に届いた。
「――もしもし、クラウド?」
「ああ。…仕事は終わったのか?」
「うん、今店を出るところだよ」
「そうか。なら、今から迎えに行く。いつもの場所で待っていてくれ」
「分かったよ。いつもありがとう、クラウド」
電話越しにもかかわらず、ライナの笑顔が頭に浮かぶ。俺が一番見たい、見ていたい、あの笑顔が。
電話を切り、バイクに跨がる。エンジンをかければ、改造に改造を加えた愛車が重低音を響かせた。
その数日後。ザックスから連絡が入った。
始まる。その合図として。
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