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 ペアを組んだ。これからは俺がお前のパートナーだ、なんて偉そうに言ってはみたけれど。


「……琉華」
「……」
「おい、琉華」
「……あっ、ごめん、何?」
「お前最近ぼーっとしてるけど、大丈夫なのか?」


 聞いてみると当たり前のように返ってくる返答。「大丈夫だよ」
 俺には分かるのに。
 お前が無理してること、分かるのに。
 お前が俺を見てないこと、分かってるんだよ俺は。
 ぼーっと琉華が見つめる先にいるのは紛れもなく、あいつだった。仲良くもしているし、才能も認める。というか、あいつだけ別次元に生きてるんじゃねえかってくらいに天才だから最早認める云々の話じゃないと思うんだけど。
 俺みたいな凡人は、きっとあいつには届かない。


「で、どうしたの?」
「……」
「翔?」


 あいつには届かない。
 だからきっと、琉華の目が俺に向くこともない。
 遠くで琉華が俺を呼んでいる声がしたけれど、それに返事が出来るような余裕もなかった。
 どうして俺は凡人なんだろう。
 どうして俺はあいつじゃないんだろう。
 どうして琉華は、どうして俺は、どうしてあいつは。
 真っ黒な感情が込み上げてくる。どうして、何故、どうして、何故。それが延々と繰り返される。


「……琉華」
「何?」


 分かってたんだ。
 俺は、分かってたんだ。


「お前さ、」


 俺といるより、あいつといる方がきっと。


「やっぱりトキヤと組めよ」


 きっと、幸せなんだ。







君の、僕の
(なんて、結局視線の先に俺がいない現実から目を背けただけじゃねーか)



title * 愛嬌様