零式 | ナノ






 赤いマフラーに口元を埋める君。それを隣で見る私。
 仲のいい友達として毎日見つめていたその横顔が、いつから輝いて見えるようになったのか。いつからこんなにも愛おしくなったのか。
 神様、教えてください。


 雪も降り、外は雪景色。真っ白になった通学路をいつものように2人で歩いた。
 今から3ヶ月半ほど前に彼、エースは私の家の隣に引っ越してきた。初めはクールで近寄りにくく、登校時に会ってしまった日には朝一番からげんなりといった感じで。
 しかしながら、あまりに登校時間が被るため次第にお互い心を開いて話をするようになり、今に至る。


「うーっ、寒っ」
「今日は一段と寒いな」
「鼻凍っちゃいそう……」


 信号待ちで並んでいる間にも冷たい風は鼻先を撫で、本当に凍りそうな気がしてくるくらい冷たい。とりあえずと手で覆ってから息を吐き、暖める。
 駄目だ、気休めにしかならない。


「駅まで後少しだ。我慢出来ないのか?」
「エースにこの鼻の冷たさは分かりません」


 珍しく朝、彼は寝坊したらしくいつもより5分遅く家から出てきた。その間待ち続けた分、私の方が温もりを奪われているわけで。
 結局手で覆うのをやめ、信号を見つめる。駅まで後少しなのは本当だし、とりあえず駅に着いたら温かいココアでも買おう。そう思いながら、信号が変わるのを待った。


「リア」


 エースの声がして振り向いた時、視界の端を青に変わった信号が掠める。
 振り向いて見えたのはもの凄く近くにある彼の顔。
 刹那の後、鼻先に温もりと柔らかな感触を感じた。


「っ!?」
「本当に冷たいな」


 朝の通勤通学者の波を背景にエースがクスッと笑う。
 今、この人何かすごいことしたような気が……。


「あ、信号点滅してるな。渡るぞ」


 戸惑う私をよそに信号の点滅に気づいたエースは、まるで当たり前のように手を引いて走り出す。
 それから鼻先の冷たさが和らいでいるのに気づいたのは少し後の話。



君と出会って101日目の朝
(その後彼は駅でココアを買ってくれました)



title→愛嬌様

キリリクしてくださった七瀬様に捧げます。
好きに書きましたが、いかがでしょうか?
何か、最近寒かったんで寒い話になっちゃった、すみません。