「ティーダの武器って綺麗だよね」
イミテーションを一通り一掃した後にいきなりアンリはボソッと呟いた。
「誰かからもらったやつなんだけど、誰からもらったか思い出せないんだよな」
「それってなんか、悲しいね」
「そうっスね」
アンリは俺とか他の奴らとは全く違う世界から来たせいか、感性みたいなものがどことなく俺達とは違ってた。
それが何となく新鮮だった。
「そんな見たいなら持ってみるか?」
「えっ、いいの?」
「もちろんっス!」
なんか嬉しそうな顔してる。
か、可愛い…
そんなことを考えながら、フラタニティをアンリに差し出す。
「わ、意外と重いね」
「そうか?あんまし感じたこと無いなぁ…」
「ティーダは力持ちなのかもね」
クラウドよりは力無さそうだけど、なんてアンリは付け足してくる。クラウドはあれは…例外だろ。
まじまじとフラタニティを見つめるアンリ。まさに未知との遭遇みたいで、面白かった。
でも……
「はぁ、そんな熱い視線を俺に向けてくれたらなぁ…」
「え?」
アンリは俺の呟きに顔を上げた。かと思えばクスクス笑う。
「何それ、口説いてる?」
うわ、アンリのやつ絶対冗談だと思ってる。俺ってそんな軽い男に見えてるわけ?
ああ、ちくしょう。軽くなんかないっての。
「本気で、口説いてるッス」
「…へ?」
「アンリが本気で好きだから、本気で口説いてるッス」
「す、すっ…好き…?!」
真っ赤になった顔もまた、可愛いんだよな。
うーん、あともう一押しってとこか。でも、どうしよう。オレ、語彙力無いし。
上手い言葉が見つかんねー…。
「ああ、大好き過ぎて死にそうなくらいッスよ!!」
「そんなに…?」
うんうん、と頷けばまた顔を赤くして遂には手で覆っちゃう始末。
うわぁ、ダメだ。可愛すぎる。
っていうか、こんなこと考えているオレって結構末期?
それに押しの一言がなんかなぁ…。死にそうなくらい好きなのは本当なんだけど。
やっぱり、ここは行動で示すっきゃないッス!!
「アンリ♪」
「何…?」
「顔、見せて」
最初は躊躇ってた。でも、そぅっと顔を覆っていた手を退けてくれた。くりっとした瞳が俺の姿を確かにとらえる。
これ、反則だっつーの。
可愛すぎるって、本当。
思いながら、露わになったアンリの頬をゆっくり撫で、そして。
「ん…っ?!」
一瞬だけど、温もりを共有する。
そっと離してやるとアンリは口元を押さえて目をまん丸くしていた。ま、いきなりだったし仕方ないよな。
「…ティーダ」
「ん?」
「私も、死にそうなくらい好きだよ…」
そう言ってふわっとアンリは笑った。
だから、反則だっつーの。
その笑顔も仕草も、全て。
反則少女に恋をした
(全てが全て、反則ッスね)