―――――俺は、バカだった。
どうしてあの時、アンリをひとりにしたんだ。
《ティーダ〜!!見てよこれ!》
《私の世界ではね〜…》
《ティーダ歩くの速い!もっとゆっくり歩いてよ〜》
「アンリ…ごめん…」
駆けつけたときにはもう、冷たかったアンリの身体。
誰がやったんだとか、どうしてやられたんだとか、そんなのどうでもよかった。
「俺が…ひとりにしたから…」
ごめん。
ごめん。
助けてやれなくて。
――――あんたがいなくなるなんて、考えたこと無かった。
どこかで、高をくくっていた。
俺がアンリを守ればいいだけだ。そんなの、簡単なんだって。
でも、アンリは死んだ。
冷たくなった。
もう、会えない。
アンリの身体が、消えていく。普通なら俺が来た頃にはもう無いはずだったその体は、まるで待ってくれていたみたいに今になって消えていく。
アンリ、泣かすの上手すぎだって…
死に顔だって、すごい良い笑顔だったじゃないッスか…
本当、上手すぎだっての…
さっきまで腕の中にいた彼女は空に消えた。もう、本当に会えない。
「じゃあな、アンリ。大好きだった」
空にそう言って、また歩き出す。アンリの分も、生きるために。
『私も大好きだったよ、ティーダ』
「!?」
振り返るけど、やっぱりいない。
俺は溢れそうになった涙をぐっと堪えてから、悲しみを振り払うように走った。
――――バイバイ、アンリ。俺、あんたの分もちゃんと戦って生き抜いてやるからな。
空の声
(大丈夫。アンリは蒼空にいるんだから)