君の隣にいるのはいつも、私じゃない。
学校の中庭にあるもみの木は、毎年冬になると装飾をする。夏には大したことないただの木だったのが、一気に冬を象徴するクリスマスツリーに変わるのだ。
今日はその点灯式。生徒はホームルームが終わるなり教室を飛び出して中庭に走った。大概は男子で、更に言えば彼女持ち。
それを横目に見ながら私も中庭に向かう。
「いや、だからさ〜アイツがね〜」
「うっそぉ!? 初耳だよそれ〜」
「まさかアイツがねぇ」
噂話に花を咲かせる友人達。いつもなら割って入るその会話も、今は右から入って左から抜けている。
もやもや、いらいら。
心を満たす感情は、中庭が近づけば近づくほど大きくなる。
きっと中庭の特等席は、あの2人のものだ。
そう考えて、またもやもや。
ああ、嫌だ嫌だ、考えたくない。そう思って首を振った頃にはもうそこに踏み入れていた。
電飾が沢山施された木。下にはトナカイや雪だるま、サンタクロースの形をした電飾。
中庭には多くの生徒が集まっていた。まだ電気がついていない為少し物足りないが、その気持ちも後少し。ライトアップされる時はもうすぐそこだった。
きっとこの人集りのどこかに、彼はいる。
きっと、あの子と一緒に。
「ティーダっ!」
聞こえた声に振り返ろうとした時、すっと横を抜けた少女。
ああ、やっぱり。
あなたが隣に、立つんだね。
横を抜けた茶髪の少女……ユウナの向かう先はただひとつ。金髪の彼が、いる場所。
「ユウナ!」
手を振る彼……ティーダの笑顔は何よりも輝いていて。
それを見る私の頬を涙が伝う。
君の隣に行けるのは彼女だけ。
君の笑顔の先にいるのは、ユウナただ一人。
私はそこには行けないし、笑顔の先にもいない。ティーダの視界に私はいない。
でも、それでも。
君の隣に、行きたい。
君の隣がいい。
(でも私は視界にすら入れない)
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恒例のナナセさんとの企画に綺春さんも加え、やってみました!
遅くなってすみませんっ
うまく書けてるといいんですが……
thanks!!:tiny様