clap log | ナノ




 彼女が卒業するその日に、馬鹿やらかした。
 ぼわぼわする頭を片手で押さえながら音の鳴った体温計を見れば、38.5という妥当な体温表示。
 卒業式に出席する予定だったのに、大好きな彼女の高校生最後の姿をこの目に納めようと思ったのに。体はだるく、頭はぼわぼわ、食欲もなにもあったもんじゃない。
 ただ、あるのは彼女に会いたいという欲。


「もう、終わったかもな……」


 時計は12時を指す。色々やってもっと長くなっているだろうが、今から間に合うかどうか。
 でも、会いたい。
 見たい。
 感じたい。
 解熱剤を飲み、コート着てマフラーをしっかりと巻く。後で体調がより悪くなるとか、間に合わないだろうなとか、そんなことどうでもいい。
 校舎前で友人と写真やら撮り、ニコニコしながら会話をする君が、僕を見て名を呼んでくれるなら。




会いたいだけですけどか?
(高熱なんて関係ない。ただ会いたい)




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